2021.04.21 08:00

【邦人記者拘束】ミャンマー軍は解放せよ

 国軍によるクーデターで混乱が続くミャンマーで、同国在住のフリージャーナリスト、北角裕樹さんが逮捕・訴追された。当局に不利な情報が「虚偽ニュース」と認定されたとみられる。
 無抵抗の民間人を突如拘束し、意に沿わない主張や情報を抑え込む。そんな野蛮な行為は到底容認できない。北角さんを即時、無事に解放することを求める。
 2月のクーデター以降、民主化の継続を求める市民は、時に数百万人規模となる反軍政デモを展開し、職務を放棄する不服従運動で抵抗の意思を示してきた。
 これに対し国軍がとった対応は、暴挙というほかない。
 デモの参加者らを銃撃したり、軍法会議で死刑判決を言い渡したりして市民に弾圧を加えている。人権団体によると、犠牲者はすでに700人以上に上る。
 言論弾圧も激しさを増している。複数の放送局などの免許を剥奪し、インターネットの利用も大幅に制限している。俳優や歌手といった大勢の有名人を指名手配したほか、ジャーナリストの拘束も相次いでいるという。
 北角さんも最大都市ヤンゴンを拠点に、現地の混乱を精力的に取材していた。会員制交流サイト(SNS)で情報を発信し、日本のメディアにも寄稿していた。そうした活動が偽のニュースを拡散し、社会不安をあおったとみられたようだ。
 2月にもデモの取材中に拘束され、その際は即日解放された。今回は政治犯が多い刑務所に収容されているという。有罪になると最高禁錮3年が科され、拘束が長期化する恐れもある。
 国軍が強硬手段に訴える背景には、市民の予想以上の抵抗、軍政への支持が広がらない現状に焦りがあるのではないか。
 国軍系の連邦団結発展党(USDP)が惨敗した昨年11月の総選挙で不正があったとして、国軍はクーデターを正当化し、統治にも自信を示してきた。
 だが、大規模デモは民政復帰を望む民意を鮮明にした。アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)などの民主派議員らも「挙国一致政府」発足を宣言し、抵抗を続けている。暴力で市民を抑え込み、言論を封じようとしても反発は大きくなるだけだろう。
 国軍によるこれ以上の暴挙を止めるには国際社会の支援も不可欠だ。しかし、国連安全保障理事会は議長声明などより格下の「報道陣向け談話」を出すにとどまり、足並みはそろっていない。
 そうした状況だからこそ、日本政府には主導的な役割を期待したい。日本は実態が明らかでない中国を除けば最大の支援国であり、国軍とも独自のパイプを有する。
 まずは人命を第一に、毅然(きぜん)とした姿勢で北角さんの即時解放を実現させなければならない。そして暴力による統治の限界を強く訴え、自制と民政への復帰を促す必要がある。

カテゴリー: 社説

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