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2021.04.20 08:00

【米アフガン撤退】和平実現へ責任果たせ

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 米国のバイデン大統領は、アフガニスタンに駐留する米軍を完全撤退させると正式に表明した。戦争のきっかけとなった米中枢同時テロが発生して20年となる9月11日を期限に設定した。
 だが、長期にわたる戦禍に苦しんだ地に、平和が訪れるかは見通せない。アフガン政府と、戦前には政権の座にあった反政府武装勢力タリバンとの和平交渉は暗礁に乗り上げている。
 米国は、戦争を始めた当事者であることを忘れてはなるまい。「真の和平」実現に向け、重い責任を果たす義務がある。
 2001年の同時テロ後、米国は国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者(11年に米軍が殺害)の引き渡しをタリバンに拒まれ、空爆を開始。「米史上最長」となる泥沼の戦争にはまり込んだ。
 転機となったのは昨年2月。トランプ政権が今年4月末を撤退期限として、タリバンと和平に合意した。大統領選への実績づくりを狙った面もあったろう。
 バイデン大統領はこの合意を見直し、約4カ月間撤退を先延ばしにした。北大西洋条約機構(NATO)も歩調を合わせ、5月までに撤退を始める。特徴的なのは「無条件の完全撤退」を強調したことだろう。そこに米国を取り巻く国内外の事情がよく表れている。
 米国内では、これまでに費やした多額の戦費や2千人を超える米兵の犠牲に厭戦(えんせん)気分が広がっている。バイデン大統領が指摘したように、歴代政権が「理想的な条件づくりや結果を期待」して駐留延長や増派を繰り返した結果、米国民の負担が増したのは間違いない。
 とはいえ、テロの温床となることを防ぐ「目的」を達成したという理由にはうなずけない。タリバンはアフガン政府との戦闘を継続し、アルカイダなどとの協力関係も絶っていないとされる。撤退期限を同時テロの節目に合わせたのは、国内向けのパフォーマンスにも映る。
 一方で、バイデン政権は外交上の最重要テーマを「対中国」へとシフトさせている。演説でも「攻撃性を増す中国との激しい競争に力を入れる必要がある」と明言した。
 いずれもアフガン国民にとっては「米国本位」に過ぎよう。米軍などの撤退により生じる力の空白で、治安がさらに悪化するとの懸念は現地のみならず米国内にもある。
 バイデン政権は3月、アフガン政府とタリバンへ、両者で暫定政権を樹立して新憲法を策定後、選挙で新政権へ移行するという和平案のたたき台を示した。
 しかし、戦争が20年に及んだことを踏まえれば、両者が合意するまでの道は険しいと言わざるを得ない。事実、米軍の撤退延期に対して、タリバンは強く反発している。
 撤退により「米国の戦争」が終結しても、アフガンの悲劇が終わるわけではない。米国は当事者として、対話による解決へ全力を挙げなければならない。

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