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2021.04.17 08:00

【ヤングケアラー】支援態勢の整備を急げ

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 家事や家族の世話に追われる子ども「ヤングケアラー」が中学生の5・7%、高校生の4・1%に上る実態が厚生労働省と文部科学省による初めての調査で分かった。クラスに1~2人いる計算になる。
 家庭にはそれぞれ事情があり、家族一人一人が自らの役割を果たすのは当然だ。そうした家族観はあろう。だが、子どもへの負担が過重となり、進路にまで影響しているとなれば「家庭内の問題」と見過ごすわけにはいかない。
 子どもたちの健康や将来を守ることは大人、社会の責任である。教育や福祉の垣根を越えた支援態勢の整備が急がれる。
 昨年12月から今年1月にかけ、公立中と全日制高校の2年生にアンケートを行った。世話をする対象は幼いきょうだい、障害を抱える父母や祖父母と多岐にわたった。
 頻度は半数弱が「ほぼ毎日」で、介護などに費やす平均時間は約4時間にもなる。「7時間以上」と答えた生徒も1割いた。
 ヤングケアラーのうち「精神的なきつさ」を訴えたのは1~2割で、半数以上は「特にきつさは感じていない」としている。ただ、気になるのはそうした中高生の6割以上が、誰にも相談したことがないと答えている点だ。
 多感な時期でもある。「かわいそうと思われたくない」「暗い話をすると空気が悪くなる」。アンケートからは独りで抱え込み、耐える姿が浮かんでくる。
 子どもにも家族の世話をするのは当然という気持ちがあるだろう。調査結果以上に、多くの生徒が「少しだけ余裕がほしい」「夜遅くまで世話して授業に集中できない」という切実な声をのみ込んでいるのではないか。
 ほぼ同時期に行われた定時制、通信制の高校生に対する調査では定時制で8・5%、通信制は11・0%と全日制より大幅に多かった。専門家は、家庭の事情が実際に進路に影響した可能性を指摘している。
 心身の健康や進路に影響が出ないうちにSOSにどう気付き、寄り添うかが問われている。
 多くの教員も生徒の変化に目を光らせ、家庭環境の把握に努めていることだろう。ただ、学校現場だけで解決できる問題ではない。ケースによっては行政の福祉担当者やソーシャルワーカー、医師などさまざまな関わりが必要になってくる。
 日本ではまだ「家庭内の問題」と捉える意識が根強いものの、核家族化はどんどん進んでいる。
 以前に比べ、家族の病気や介護、所得格差といった問題が、より子どもにのしかかりやすくなっていよう。社会的な問題でもあるという認識を広く共有し、多くの目で子どもたちを見守りたい。
 政府は福祉サービスにつなぐ仕組みを整理した上で、5月にも相談窓口の拡充といった支援策をまとめるという。独りで悩まなくていい。子どもがそう感じられる環境づくりを求める。

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