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2021.04.16 08:00

【ウラン濃縮60%】イランは緊張を高めるな

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 重大な核合意違反だ。中東地域の緊張を高めることにもつながり、容認できない。
 イランは濃縮度60%のウランの製造へ、中部ナタンズの核施設で作業に着手した。
 イスラエルの関与が疑われる核施設の破壊工作に強硬姿勢で対抗した。核合意の再建へ向け米国との間接協議が本格化する中、早期の制裁解除へ揺さぶる狙いもうかがえるが、挑発では進展は望めない。
 イランの核兵器保有を防ぐための合意は、核開発を制限する見返りに、米欧などが制裁を解除する内容だ。しかしトランプ前米政権が一方的に合意から離脱して制裁を発動したため、イランは段階的に合意破りを繰り返してきた。
 バイデン政権の誕生に合わせるようにウラン濃縮度を兵器級に近づく20%に引き上げ、また国際原子力機関(IAEA)の査察の制限にも踏み切っている。合意への復帰方針を示すバイデン政権に圧力をかけて、制裁解除を急がせる狙いだ。
 イランのロウハニ大統領は3月、米国が制裁の一部を解除すれば、イランも核合意逸脱の一部を元に戻す用意があると表明した。米国とイランは今月、欧州連合(EU)などを介して間接協議を本格化させ、合意の立て直しへ動いている。
 協議の進展は判然としないが、米国がイラン産原油の禁輸や銀行取引の禁止などを解除し、イランはウラン濃縮度引き下げや査察の受け入れなどを図ることで調整しているとみられる。実効性を高めるため、あらかじめ詳細な日程を定めた行動計画で合意して、並行して進めることが検討されているようだ。
 そうした状況下で、核施設の電源が破壊された。核合意再建に強く反対するイスラエルの関与が指摘される。イランはこれに対抗して、ウラン濃縮度の大幅引き上げを打ち出してきた。
 イランでは昨年12月、核科学者暗殺事件を背景に、核開発の大幅拡大を政府に義務付ける法が成立した。保守強硬派の発言力が高まり、合意破りを強めることになった。
 今回の核施設破壊工作の背後には米国がいるとみて、間接協議の打ち切りを求める意見も強い。決裂すればイスラエルの思惑通りになるため、イラン側も協議はひとまず続ける構えだ。しかし、濃縮60%を交渉の圧力に使うようでは先行きの不透明感は強まってしまう。
 イラン政府筋は60%濃縮は医療用で、製造量は少量にとどめるとする。批判をかわす狙いの一方で、交渉をつなぎ留めたい穏健派ロウハニ政権の意図も感じさせる。6月のイラン大統領選は米国との協議を嫌う強硬派が政権を奪取し、局面が変化することも考えられる。
 経済制裁で苦境が続くイランには中国が接近し、政治経済関係を強化するための協定を結んだ。ロシアとも連携を深め、対米共闘を模索している。各国の思惑が複雑に絡み合うが、合意を立て直し、イランの核開発を阻止しなければならない。

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