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2021.04.15 08:00

【ワクチン接種】長期的な視野で戦略を

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 65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。
 東京や大阪など6都府県に「まん延防止等重点措置」が適用されている。感染再拡大への危機感が高まっているが、対策の「切り札」とされるワクチン接種は他の先進国と比べて大きく出遅れている。
 政府はワクチンの安定的な確保に全力を挙げつつ、自治体と緊密に連携を図って効率的に接種を進める必要がある。
 ワクチンの接種は先行する医療従事者、今回の高齢者に続き、基礎疾患のある人、一般の人という順番で行われる。約3600万人に上る高齢者で円滑に接種を進められるかどうかは、大規模な接種事業全体の試金石となろう。
 感染力が強い変異株が県内外で広がり、流行の「第4波」が現実味を帯びている。重症化するリスクの高い高齢者の不安を解消することはそのまま、犠牲者の抑制や医療現場の負担軽減にもつながる。
 しかし、肝心のワクチン供給は心もとない。具体的なスケジュールが見通せない状況にある。
 政府は接種が本格化する5月中旬には供給量が増えるとしているが、接種の開始に際して県内に届いたワクチンはごくわずかだった。
 市区町村はそれぞれの事情に合わせ医師や看護師、接種会場の確保に追われている。供給不安は、住民と直接向き合う自治体の負担をさらに増やしていないか。医療従事者への接種も終わっていない段階で、見切り発車の感も否めない。
 国内で接種されるワクチンは、現状では米国のファイザー製だけだ。国内企業の開発も進んではいるものの、実用化のめどは立っておらず、「輸入頼み」となっている。
 日本ではかつて、予防接種の副反応が社会問題となり、ワクチン開発に消極的な状況が続いた。海外で死亡率の高いウイルス感染症が発生しても国内での流行は免れ、危機感を欠いていたのは間違いない。
 新型コロナウイルスのワクチンでも国内で治験が遅れ、対応は後手に回った。ファイザーの主力工場がある欧州連合(EU)の輸出管理強化も重なり、国際的な争奪戦に翻弄(ほんろう)される形になっている。
 国内で1回目の接種を受けた人の割合は、10日時点の調査で1%にも届いていない。イスラエル(61・3%)や米国(35・0%)などに大きな差をつけられ、日本より遅れて接種が始まった韓国(2・2%)をも下回っている。世論調査では、6割を超える国民が「不満」を感じていると答えた。政府は重く受け止めるべきだろう。
 新型コロナウイルスワクチンは新しいだけに、効果がどれだけ持続するのかがまだ分かっていない。流行が長引けば、一定の間隔で繰り返し接種しなければならない可能性もある。政府は国産やライセンス製造などを含め長期的な戦略を構築し、国民が安心して生活できる環境を取り戻さなければならない。

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