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2021.04.09 08:00

【子ども庁構想】政策の実効性こそ重要だ

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 政府や自民党内で、子ども関連政策の司令塔となる「子ども庁」構想が急浮上している。
 より子どもを産み育てやすい社会を実現する。多くの国民がこのことに異論はあるまい。縦割り行政の弊害が明らかなのであれば体制の見直しを検討する必要もあろう。組織に関する議論を通じ、施策や省庁間連携の問題点を浮き彫りにし、実効性のある政策を求めたい。
 菅義偉首相(自民党総裁)が参院決算委員会で新設への意欲を示した。少子化対策に取り組む自民党の国会議員有志から子ども庁新設の提言を受け、総裁直属の党組織で課題整理や省庁間の役割分担などを論議するよう指示した。6月ごろ策定する政府の「骨太方針」にも明記する方針だという。
 政府はこれまでにも保育サービスの拡充や現金給付といった模索を続けてきたが、少子化をくい止める決定打とはなっていない。
 女性1人が産む子どもの人数を示す「合計特殊出生率」は1・36(2019年)。現状は、若い世代が希望通りに子どもを持てる「希望出生率1・8」という政府目標にはほど遠い。
 さまざまな政策を実施してきたにもかかわらず、依然として若い世代の間で結婚や出産、育児の環境に対する不安が解消されていないことを示していよう。対策を強化すべき政策テーマなのは間違いない。
 今回、再編構想の俎上(そじょう)に載ったように、子ども関連の政策を担う行政組織は複雑で、国民にとって分かりづらいのは確かだ。
 教育一つにしても、幼稚園や小中学校は文部科学省、保育所が厚生労働省、認定こども園や幼児教育・保育無償化は内閣府といった具合だ。さらに、子どもの安全安心を確保するには法務省や警察庁との連携も必要となってくる。
 とはいえ、そうした縦割り行政で政策決定に時間がかかるといった問題は、以前から指摘されてきた。政府が少子化対策に本腰を入れ始めてからでも、すでに30年たつ。
 なぜ今、子ども庁新設なのか。新組織の必要性や役割が漠然としていることを含め、唐突な印象は拭えない。
 10月に衆院議員の任期満了を控え、菅首相がいつ解散・総選挙を決断してもおかしくない。そうした状況での構想浮上が「総選挙をにらんだアピール」「目玉公約づくり」とみられても仕方あるまい。
 国民が求めているのは新しい組織ではなく、あくまで子どもを産み育てやすい環境であり、政策の実効性だろう。新組織を打ち出す前に、従来の施策がなぜ思うような効果を上げられなかったか、省庁間の連携で何が支障だったのかを洗い出すべきではないか。
 子どもに関する政策が多省庁にまたがっているのは、それだけ生活に直結し、社会にとって重要な課題である裏返しだ。「新設ありき」の組織論で議論が終始すれば、かえって国民の期待を裏切りかねない。

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