2021.04.08 08:00

【北朝鮮不参加】安全確保が五輪の基本

 北朝鮮が東京五輪への不参加を表明した。パラリンピックの参加も見送る。世界的に流行する新型コロナウイルス感染症から選手を保護するためとしている。
 参加見送りを表明した初めての国となる。北朝鮮の政治的な思惑もありそうだが、日本では感染の再拡大やワクチン接種の遅れが指摘されるのも確かだ。ほかの国・地域に影響することも考えられるだけに、大会運営を巡る具体的な対策を示していくことが求められる。
 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮は、新型コロナへの警戒感は極めて強いようだ。中国で感染が拡大した昨年1月末から国境を封鎖している。自国民の海外からの帰国さえ認めていないという。国内に感染者はいないと主張している。
 感染拡大前には、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が東京五輪への参加の意向を示し、南北合同チーム結成の合意もあった。しかし具体化はせず、感染拡大に伴い選手団派遣の可能性は低いという見方が広がっていた。
 五輪を通じて南北融和を後押ししてきた国際オリンピック委員会(IOC)にも打撃は大きい。
 その一方で北朝鮮による揺さぶりも見て取れる。聖火リレーが始まった日に日本海に向けて約1年ぶりに弾道ミサイルを発射した。この日には参加見送りも決めていたようだ。
 それを発表したのが、日本政府が閣議で北朝鮮への独自制裁を2年延長する決定をした日だった。タイミングを見ながらの行動となると、五輪期間中の挑発行為を警戒しなければならなくなる。
 日朝関係は冷え込んでいる。菅政権は、北朝鮮による日本人拉致問題を最重要課題と位置付ける。対話が途絶する中、東京五輪での接触も想定され、事態打開へとつながることが期待されたが、厳しくなった。
 ただ、開幕まで3カ月以上ある段階での不参加発表は、日本へ向けた政治的な意味合いが含まれるという見方もある。見誤らずに事態の好転へとつなげたい。
 北朝鮮では国境封鎖で経済難が深まっている。農業用の物資の不足や、電力不足による炭鉱や鉱山の生産停止などに陥っている。食料事情の悪化も伝えられる。北朝鮮側は否定しているが、国連などは子どもらの栄養失調の深刻化を懸念している。孤立していては国民生活の改善は望めはしない。
 他方、北朝鮮が東京五輪に突きつけた懸念は大会の骨格に関わるものであり、真剣に受け止めるべきことでもある。コロナ対策が焦点であることは間違いない。開催には科学的な判断に基づいた「安心安全」を確保することが基本となる。
 海外からの一般観客受け入れは既に断念した。変異株が広がる中、運営方式を柔軟に変更しながら、防疫を徹底することが不可欠だ。
 今夏の開催を望む国内世論が2割強に対し、中止は4割近い。国民の理解を高め、国内外の人々が納得できる感染対策を示して支持を得ていく必要がある。

カテゴリー: 社説

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