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2021.04.06 08:00

【選挙制度見直し】香港の民意が消される

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 香港民主派の政治参加をあからさまに阻止する仕組みが打ち出された。高度の自治を約束した「一国二制度」の空洞化は決定的となってしまう。
 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会の会議は、香港の選挙制度見直し案を可決した。民主派の一掃を狙い、いくつもの障壁を構えている。
 立候補者は、「中国香港への忠誠」という条件を満たしているかどうかが問われることになる。そこでまず立ちはだかるのが、親中派が多い「選挙委員会」から推薦を得なければならないことだ。
 さらに、反政府活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)を根拠に設置した委員会が、警察の情報に基づき適格性を判断する。その上で、新設される「資格審査委員会」が審査することになる。
 ここでは、政権転覆などを持ち出す恣意(しい)的な運用で民主派を不適格とするのではないかとの見方がある。しかし、異議があっても訴訟を認めないと、強権的だ。
 親中派を絶対多数とするために議席枠の見直しも行った。香港トップの行政長官を選ぶ「選挙委員会」は、親中派に有利な枠を増やし、民主派が多数を占める区議会(地方議会)議員枠は取り消した。
 また、立法会(議会)は定数を拡大して選挙委に新たに与えた一方、直接選挙枠は減らした。業界別の職能代表枠は維持したが、その中の区議会議員枠はなくなった。
 そして当選しても、政府の法案に反対すれば議員資格を奪われる可能性さえ指摘されている。
 選挙の形式を残すだけでは、一国二制度を維持しているとはならない。骨抜きの制度では民意の反映はできなくなってしまう。
 普通選挙の導入を目標に掲げる香港基本法はないがしろにされてしまった。香港の政治を中央政府の管理下に置く動きが加速し、民主派の議会活動は相当難しくなった。
 2019年の区議会選挙は、民主派が8割を超す議席を獲得した。立法会の過半数獲得を目指して昨年行った候補者を絞る予備選は、国安法違反と威嚇されながらも想定を上回る投票が行われた。こうした動きに中国共産党は、反中勢力が選挙を利用して香港の統治権を奪おうとしているといらだち、中央主導で選挙制度の改変へと進んでいく。
 全人代第4回会議が見直しを決めると、常務委員会は異例の早さで選挙制度を定めた香港基本法の付属文書を改正した。林鄭月娥行政長官は、昨年9月から1年間延期した立法会選を再延期して12月に実施し、行政長官選挙は来年3月に行うと述べている。
 国際社会は香港の民主化が後退することを懸念し、批判を強めている。これに対し中国は「内政」を繰り返し、香港の実情に合った民主制度との姿勢を崩さない。
 だが、強引な手法は不信感を強めるだけだ。国際社会と対立するばかりでは自国の利益にもならない。

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