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2021.04.04 08:00

【高校の新教科書】「深い学び」へ態勢を

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 来春から高校で使われる教科書の検定結果を、文部科学省が明らかにした。新学習指導要領に対応した初の教科書となる。
 新指導要領に掲げた「主体的、対話的で深い学び」をどう実現していくか。高校現場は、一方通行と批判されることもあった従来の授業スタイルから、これまで以上に変化を求められる。
 新たな教科書は多角的な考察や表現力などを育成するため、全体的に生徒同士の話し合いや発表を重視した構成となった。
 文科省によると、性差別や性の多様性に関する記述は保健体育などにとどまらず、6教科51の教科書に盛り込まれた。社会進出における男女間格差や性的少数者の問題は、国際社会からも厳しい目を向けられている。
 生徒一人一人が身近なテーマとして捉え、解決への道筋を考えることは新指導要領の方向性にも合致しているだろう。社会全体へ意識改革を広げるきっかけとしたい。
 国語や地理歴史・公民では科目が大きく再編され、必修科目も新設される。実社会とのつながりを重視した形だが、新たな取り組みだけに課題もある。
 従来の「国語総合」は、評論や法律といった実用的な文章を扱う「現代の国語」と、古文や漢文を含めた文学作品を取り上げる「言語文化」に分けられた。
 しかし、文章の論理性と文学的な魅力は全く別物とはいえまい。さまざまな文章に一体的に触れ、言葉への興味と理解を深めてこそ、すべての学習の基となる読解力を高めることにつながるのではないか。
 「地理総合」「歴史総合」「公共」の検定では、新指導要領の「対話的で深い学び」というテーマに疑問符をつけたくなるケースもみられた。領土や外交に絡んで政府見解の正確な記述を求める検定意見が相次ぎ、修正されている。
 だが、尖閣諸島の「解決すべき領有権の問題は存在していない」という政府見解を教えるだけでは、かえって中国公船の侵入が続く現状を理解しづらいのではないか。歴史的な経緯や相手国の主張、国際的なルールなどを十分に踏まえ考えるよう促すべきだ。
 「深い学び」を定着させるには、より教員の創意工夫が求められるようになろう。一方で、教えるべき知識量が減ったわけでもない。授業のみならず、部活動や生徒指導で多忙な教員の負担が増すことになる。
 すべての生徒がプログラミングを学ぶ「情報Ⅰ」では、専門的な教員の不足も指摘されている。地方の小規模な高校ではより確保が難しい可能性もある。2025年以降は大学入学共通テストでの出題も検討されている。生徒が学ぶ地域によって習得度に格差が生まれるような状況は避けなければならない。
 そうした課題への対応は、学校現場、教員個人では限界がある。政府は予算や人員を含めた態勢をきちんと整える必要がある。

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