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2021.04.01 08:00

【入管法改正案】国際基準に沿う見直しを

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 入管難民法改正案が国会で審議されている。日本からの退去命令を拒む外国人の長期収容問題を解決する目的がある。
 改正案は収容施設外での一時的な生活を認める。一方で、難民申請中の強制送還停止に制限を設ける。早期の退去を促す厳しい内容である。
 日本の入管制度は、外国人の人権に十分配慮しているか。国内外から厳しい目が向けられている。国際基準に沿った法改正を目指すべきだ。
 退去命令を受けた外国人のうち9割以上は自ら出国している。命令を拒んで長期収容される人の多くは難民申請者が多い。帰国すれば命に危険が及ぶ恐れがあったり、日本に長年暮らしてきて家族がいたり、帰れない事情を抱えている。
 2019年末時点で1054人が収容されている。期間は6カ月以上が4割を超えており、3年以上も63人に上る。
 19年は全国の入管施設で長期収容に抗議するハンガーストライキが広がり、長崎県で収容者のナイジェリア人男性が餓死した。政府はこれを受けて法改正に動いた。
 改正案では、施設収容の原則を見直し、施設外での生活を認める「監理措置」を創設する。親族や支援者らの監督などを条件とし、逃亡した場合は罰則を科す。
 難民申請中は強制送還が停止されるので、申請を繰り返す人も多い。そのため、回数を問わなかった難民申請による送還停止を相当な理由がなければ原則2回に制限する。
 母国の紛争などを想定し、難民に準じる「補完的保護対象者」として在留を認める制度も創設する。
 しかし、専門家や人権団体は改正案に対し「問題解決につながらない」と反対の声を上げている。
 特に難民申請による送還停止の「2回制限」は、難民条約に反する恐れがある。迫害の危険がある国へ難民を送還することを禁じている条約だ。
 日本では、難民申請しても大半のケースで認定されない。欧米の難民認定率が数十%なのに対し、日本は1%に及ばず「難民鎖国」と非難されている。
 日本は保護すべき難民を保護できているのか。疑念を持たれても致し方ないだろう。入管施設の収容期間に上限を設けていないことも、長期収容につながってきた。
 さらに収容は入管当局の裁量に任されている。だが、裁判所の判断を必要とするのが国際基準だ。これらの点は、国連人権理事会の作業部会が日本政府に改善を求めている。
 今年3月には、名古屋市の施設に収容され、体調不良を訴えていた30代のスリランカ人女性が死亡した。入管施設の医療体制は不備が指摘されており、収容者の処遇改善を急がねばならない。
 国会には野党共同の改正案も提出されている。難民認定基準の明確化や収容時に裁判所が関与することなどが盛り込まれている。うなずける内容であり、野党案も取り入れる姿勢で国会で審議することを求める。

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