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2021.03.30 08:00

【国会召集訴訟】憲法判断なぜ避けるのか

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 安倍内閣が2017年、野党が出した臨時国会の召集要求に応じなかったのは違憲だとして、野党議員が内閣の召集義務の確認を求めた訴訟の判決が東京地裁であった。
 判決は憲法判断に立ち入ることなく、形式論で訴えを退けた。昨年6月の那覇地裁の判決は、臨時国会召集について定めた憲法53条の趣旨を明確に判断している。それに比べると今回の判決は後退したとみるほかない。なぜ憲法判断を避けたのか、疑問が残る。
 憲法53条は、衆院か参院のいずれかで議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないと定めている。
 今回の判決はまず、民事訴訟で法的救済を求めることができるのは「個人としての権利や利益が侵害された場合に限られる」とした。召集要求は国会議員という国の機関の地位に基づくものだから「個人の権利侵害とはいえない」と結論づけた。
 この考え方なら、同様の訴えで判断を求めるのは個人の立場でしかできない、と考えることもできる。だが同条は国会議員の召集要求を前提としている。判決の理屈はやや理解に苦しむ。
 那覇地裁の判決は、同条に基づく臨時国会の召集要求を受けた場合、内閣は召集する義務があるとした。召集は単なる政治的義務ではなく、憲法で規定された法的義務で、召集時期に関する内閣の裁量も大きくないと述べている。その上で応じなければ、違憲と評価される余地はある、とまで判断している。
 憲法は国会を国権の最高機関と位置付け、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織するとうたう。議員は国会でさまざまなテーマで質疑し、議論を深める。是非や問題点などを国民に分かりやすく提示する責任がある。何より重要な議員の使命だといえよう。
 2017年当時は国会で森友、加計両学園問題への安倍晋三前首相らの関与の有無などが問われていた。野党が出した臨時国会の召集要求は、真相解明に向けて質疑の場を設けるのが目的だった。
 安倍政権は召集要求を98日間放置した。その揚げ句、やっと召集した臨時国会では冒頭での解散に踏み切った。問題追及の場を設けずに済ませ、憲法や国会質疑、議員の使命を軽んじる姿勢をあらわにしたといえる。
 自民党が12年に発表した改憲草案には、臨時国会の召集要求から召集までの期間を「20日以内」と明記している。それも尊重しなかった。
 那覇地裁の判決はまた、同条は少数派の国会議員の意見を反映させる趣旨がある、とも指摘した。内閣が召集義務を履行しなければ、少数派の議員の意見が国会に反映されなくなる恐れがあるとも述べている。
 憲法の規定を守らず、国会召集の要求を放置することがまかり通る。それが許されるなら、憲法が空文化することになりかねない。違憲性を問う訴訟に司法は真摯(しんし)に向き合わなければならない。

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