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2021.03.29 08:00

【皇位継承策】将来見据え議論を進めよ

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 安定的な皇位継承策を検討する政府の有識者会議の初会合が開かれた。早急な検討を求めた国会の付帯決議から4年、上皇さまの天皇退位から2年近く。先送りされてきた議論がようやく始まった。
 皇位継承の次世代の有資格者は秋篠宮さまの長男、悠仁さま(14)のみで、危機的な状況とされる。
 象徴天皇制をどう維持していくかは、日本という国のあり方の根幹に関わる。皇位継承策は立場によって意見が割れるが、国民が納得できる結論を目指して、議論を進める必要がある。
 有識者会議は男女同数の6人で構成され、皇室制度の専門家から意見聴取する10項目を確認した。政府は数カ月かけて論点を整理した上で国会に報告し、各党の意向も踏まえて意見集約を目指す考えだ。
 皇室典範では、父方に天皇の血を引く男系の男子のみが皇位につくと定めている。皇族の女性が皇位につく「女性天皇」や、父方に天皇の血を引かない「女系天皇」は認めていない。現行制度を見直すかどうかが大きな論点になる。
 「男系維持」は自民党内などの保守派が強く主張している。菅義偉首相も「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重み」として、見直しに慎重な姿勢を崩していない。
 ただ、国民の間では女性・女系天皇への支持が広がっている。共同通信社が2020年春に実施した世論調査では、女性天皇賛成派が85%、女系天皇賛成派は79%に上った。
 立場によって意見は割れており、集約は難航が予想される。既に政府内では、現在の継承順位を維持した上で、明確な結論提示は見送るべきだとの声が出ている。
 しかし、それでは問題のさらなる先送りになろう。皇室制度の危機的状況を長引かせることにつながる。
 皇族が減るなか、公務をどう分担し、皇室活動を維持するか。この点も喫緊の課題になっている。
 皇室典範は天皇、皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると定める。天皇陛下の長女、愛子さま(19)、秋篠宮さまの長女、眞子さま(29)、次女の佳子さま(26)も皇族でなくなる可能性がある。
 このままでは、皇位継承の重責も皇室活動の負担も悠仁さまに集中しかねない状況が懸念される。公務の担い手を確保する方策が急がれる。
 国会の付帯決議では、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」創設を検討するよう求めている。
 ただ、保守派は将来の女性・女系天皇につながるとして、女性宮家創設にも拒否反応が強い。
 一方、有識者会議では旧宮家(旧皇族)男系男子子孫の皇籍復帰の是非も意見聴取の項目に含まれた。保守派の「宿願」といわれるが、共同通信社の世論調査では、旧宮家の皇籍復帰への賛成は28%にとどまる。
 論点はさまざまあり、開かれた形で議論を深める必要がある。菅首相は強い危機感を持って取り組み、多くの国民に支持される皇室制度の将来像を示す責任を負っている。

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