2021.03.27 08:39
西内悠人「一番うれしい」、格上連破し頂点に立つ レスリング全国高校選抜大会
西内はこの日、3回戦、準々決勝を危なげなくTフォール勝ちした。準決勝は、昨年10月の全国選抜大会51キロ級を制した尾西(鳥栖工)に5―3。決勝は同大会55キロ級王者の弓矢(いなべ総合)に対し、1―3の残り1分20秒を切ってから2ポイントを奪って追いつくと、その後は相手の反撃をしのぎ3―3。最後の得点を奪った「ラストポイント」で判定勝ちを収めた。
他の県勢は、60キロ級の島崎翔悟(東)と上村律心(南)、71キロ級の井上葉月(東)がいずれも3回戦で敗れた。
競技人生で「一番うれしい」
どよめく会場のマットで、顔をくしゃくしゃにした西内が2度両拳を握りしめた。「僕のレスリング人生で一番うれしい大会になった」。1年生が、高校入学後初の全国大会でいきなりの頂点。しかも、準決勝で昨秋全国選抜大会51キロ級覇者、決勝も同大会55キロ級王者という2年生2人を倒したのだから。
大会終盤の2試合は苦しい戦いだった。準決勝は1―3で残り30秒を切った劣勢から、起死回生のタックルで同点に。最後は捨て身で仕掛けてきた相手を押さえ込み、鮮やかな逆転劇を演じた。
決勝も、劣勢からの逆襲。1―3の残り1分20秒、勝負を決めようとタックルを仕掛けてきた相手に両脚を取られ、倒されかけた。そんな「絶体絶命」(桜井監督)の体勢から、持ち前のバランスの良さと柔軟性で体を入れ替え、逆に相手をひっくり返す。2ポイントを獲得して追い付くと、相手の猛攻をしのぎ切った。
新型コロナウイルスの影響で全国大会が次々中止になった一年。唯一開かれた昨秋の全国選抜大会は昨春の代替大会のため、1年生は出場できなかった。日頃の練習は時間が制限され、強豪選手と胸を合わせる県外遠征も禁じられた。
「モチベーションが下がっていた」と筋トレやダッシュなど自主トレに身が入らない日があった。それでもチームメートとのスパーリングだけは別だった。「仲間に負けたくないし簡単にポイントは与えなかった」。一日たりとも練習で気を抜くことはなかった。
重点的に取り組んだのが「残り30秒、残り1分の攻防」。負けている時にどうポイントを奪い、リードしている場面をどうしのぎ切るか。まさに、それが問われた準決勝、決勝だった。
「しんどい練習ですけど逃げずにやった。その成果が間違いなく出ました」と振り返った西内。「実力者2人を倒して、自分はすごいことやったんだな、って。今日は自分で自分を褒めたい」。静かに喜びをかみしめた。(谷川剛章)