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2021.03.27 08:00

【北朝鮮ミサイル】平和と安全を脅かす挑発

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 北朝鮮がまた緊張を高める動きを見せた。弾道ミサイル2発を25日、日本海に向けて発射した。ほぼ1年ぶりで、バイデン米政権が発足して初めてとなる。
 日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。政府は飛行距離を450キロと発表していた。
 朝鮮中央通信は、新たに開発した「新型戦術誘導弾(ミサイル)」の発射実験を行い、600キロを変則軌道で飛行して日本海に設定した目標を打撃したと伝えた。弾頭重量は2・5トンに増やしたとする。事実なら核搭載も可能となる。
 日米韓は今回の発射の動きを事前に察知できなかったようだ。実戦能力の向上を想定しなければならなくなった。日本の安全保障への新たな脅威であり、核・ミサイル開発に歯止めをかけなければならない。
 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は、1月の党大会で核戦力増強路線への回帰を鮮明にした。今後、兵器実験を本格化させるとみられる。平和と安全を脅かす行為は阻止しなければならない。国際社会の協調した取り組みが求められる。
 バイデン政権は2月中旬から水面下で北朝鮮と接触を試みたが、何の反応も得られていないという。北朝鮮による3月21日の巡航ミサイル発射を国連安全保障理事会の制裁対象にはならないとして静観すると、その姿勢を挑発するかのように弾道ミサイルの発射へと動いた。
 バイデン米大統領は就任後初めての記者会見で、北朝鮮の弾道ミサイル発射再開を国連安保理の決議違反と指摘して、決議違反の明言に消極的だったトランプ前大統領との違いを明確にした。そして「緊張を高めることを選ぶなら対抗措置を取る」と警告した。
 トランプ政権は長距離弾道ミサイルの廃棄は求めたが、自国に影響を与えない短距離ミサイルは問題視しなかった。このため日米韓の足並みに乱れが生じてしまった。国際協調を掲げるバイデン政権となって連携の再構築を急ぐ中で、北朝鮮はミサイル発射でその動きをけん制したととれる。
 バイデン政権は北朝鮮の非核化に向けた新たな政策を策定中で、近く発表する見通しだ。また日米韓3カ国の高官協議も予定される。
 ただ、日韓関係は慰安婦や徴用工の問題で悪化し、北朝鮮と向き合う姿勢にも違いがある。北朝鮮が対話に応じず、核・ミサイル開発阻止への有効な対策が見いだしにくい状況だ。3カ国が緊密に連携できなければ、開発を加速させかねない。
 北朝鮮は厳しい経済状況が続いている。農業用の物資が十分に確保できず、電力不足で炭鉱や鉱山の生産も滞っているという。
 中国からの支援への期待もあるだろう。中国は国連制裁を緩めているとされる。だが、度重なる実験は中国の反発を買うことも想定される。先の米中高官会談は双方の主張が平行線をたどる一方、対北朝鮮では協力可能との認識で一致した。あらゆる方面からの関与が求められる。

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