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2021.03.24 08:00

【海外観客断念】安全で簡素な五輪追求を

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 残念だが、やむを得ない判断だろう。東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観客受け入れが断念された。
 世界的に新型コロナウイルスの感染状況が厳しい。日本は開催国として、国内外の人々が納得できる感染対策を示す必要に迫られている。
 今夏の開催に向けては、科学的な判断に基づいた「安全安心」が前提になる。国内の感染再拡大を食い止めながら、海外選手らを迎える体制づくりを急がねばならない。
 大会組織委員会と政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者協議で決まった。
 海外在住者向けチケットは計63万枚で、今後払い戻しに入る。海外在住の外国籍ボランティアの受け入れも原則的に見送る。
 国内観客の上限については、4月中に5者協議を再び行って方向性を決める。会場の収容人数の「50%」とする案を軸に検討されている。
 今回の決定は水際対策を厳しくする姿勢を示したものだ。とはいえ、大会本番は選手や大会関係者が数万人規模で来日すると見込まれる。
 いかに防疫措置を徹底できるか。変異株も念頭に置いて、期間中の検査体制の強化が欠かせない。
 地方での感染対策も重視しなければならない。全国各地で海外勢の事前合宿が計画されている。高知県もチェコとシンガポールを受け入れる予定だ。組織委などは対策を担う自治体などを十分に支援し、受け入れ側の不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。
 聖火リレーがあす、福島県から始まる。本来なら大会への機運が盛り上がる時期だが、依然として五輪開催に懐疑的な国内世論は根強い。
 共同通信の今月の全国電話世論調査では、今夏開催を望む人の割合は23・2%。一方、中止するべきだとした人は39・8%に上る。
 首都圏への緊急事態宣言は解除されたとはいえ、切り札とされるワクチン接種は十分に進んでいない。変異株も脅威となる中で、国民の感染再拡大への不安が「中止」世論につながっていると言えよう。
 国民の理解を少しずつでも広げていこうとするなら、組織委や政府は随時、最適と思われる運営方式に見直していくべきだ。競技ごとの実施方法や感染対策を、細やかに発信することなどが欠かせない。
 会場の収容人数も感染状況に応じて変わらざるを得ないだろう。どのくらいの感染レベルなら、無観客開催にするのか。国内外にさまざまな選択肢を示して、大会への支持を得ていくことが必要ではないか。
 今回の断念に伴い、観戦や交流の代替策にも工夫を凝らさなければならない。各国の人々が国際交流を深めたり、平和を推進したりする。それは五輪本来の大きな役割である。
 一方で、近年の五輪は華美になりすぎているとの批判も高まっていた。コロナ下の五輪は新しい形として、安全で簡素な大会を目指したい。スポーツ自体の魅力はそれでも十分に伝わるはずだ。

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