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2021.03.19 08:00

【緊急事態解除へ】怠れない再拡大への警戒

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 首都圏1都3県に発令中の新型コロナウイルスの緊急事態宣言は、21日の期限で解除される。1月の再発令から2カ月半かかった。
 新規感染者数の減少や、病床使用率の改善などが判断材料になったという。東京五輪・パラリンピックの聖火リレーを25日に始めるには、これ以上延ばせないという思いもあっただろう。
 「宣言慣れ」「自粛疲れ」という言葉も聞かれる中での解除だ。感染者数はピークを過ぎたとはいえ、抑え込めてはいない。変異株も気になる。次回3度目の宣言となると訴える力はさらに薄れかねない。
 政府は今後も、必要な感染対策を継続するとしている。感染が再拡大して医療崩壊へとつながるような事態を招かないように、対策を再構築することが欠かせない。
 再発令は1都3県に続いて関西など7府県が加わった。この7府県は2月中に順次解除されたが、首都圏は2度にわたり延長されていた。
 振り返ると、「第3波」の流行は昨年11月前半に本格化している。政府が重点的対策を呼び掛けた下旬からの「勝負の3週間」でも感染拡大は止まらなかった。
 政府は観光支援事業「Go To トラベル」の見直し提言を受けても、全国一時停止にはなかなか踏み込まなかった。経済再生を優先して対応が後手に回ることに批判が強まり、内閣支持率は低迷した。
 再宣言の際、菅義偉首相は、1カ月後には必ず事態を改善させると意欲を示した。しかし、解除にはさらに1カ月半を要したことになる。国民の協力が必要な局面に、議員が銀座のクラブを訪ねたりして世論の不信感を高めたこともあった。
 この間、飲食店の時短営業やテレワーク推進による出勤者数の削減、イベント人数制限などが求められた。公的支援の下支えはあるが経営環境は厳しく、雇用にも響いた。生計維持が困難になっている世帯も多い。緊急小口融資の貸付決定件数は東日本大震災時の10倍を超える。
 宣言解除に伴い、政府は飲食対策や医療提供体制の充実などを打ち出す。変異株を見つけるスクリーニング検査は、現行の5~10%から40%程度に引き上げる方針を示した。大切なのは、それが実際にできる体制を構築することだ。
 厚生労働省に助言する専門家組織の分析では、全国の感染者は横ばいから微増が続いている。特に若者の感染者増が見られるとして、新たな流行への懸念を示す。
 経済回復へ向けて、感染を防ぎつつ制約を段階的に緩和し、同時にワクチン接種率を高めていくのが政府の思惑だろう。しかし、接種スケジュールもまだ定かではない。再拡大で医療従事者らの負担が大きくなるとさらに見通せなくなる。
 昨年春の花見シーズンに「気の緩み」で人出が増え、4月の緊急事態宣言につながった。1年がたち、コロナと向き合う知見も増えている。国、自治体、住民が一体となって難局を乗り切りたい。

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