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2021.03.14 08:00

【香港選挙見直し】民主派排除は許されない

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 香港から民主派勢力が排除され、選挙で民意を示すことができなくなる。香港の政治は中央政府の管理下に置かれてしまい、高度の自治を保障した「一国二制度」は完全に崩れてしまう。
 中国の第13期全国人民代表大会(全人代=国会)第4回会議は、香港の選挙制度見直しを決めた。
 共産党・政府に批判的な勢力を一掃する狙いが鮮明だ。昨年施行した反政府活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)に続き、統制強化が進むことになる。
 香港の憲法に相当する基本法が目標とする「普通選挙」の実現は絶望的になる。民主化を求める市民の期待に逆行しており、断じて許されない。日本政府は「看過できない」と懸念を伝えた。中国は国際社会の反発を厳粛に受け止めるべきだ。
 決定では、香港政府トップの行政長官を選ぶ選挙委員会の定員を増やす一方、民主派に有利な区議会(地方議会)枠は明記されず取り消したとみられる。立法会(議会)も議席数を増やしたものの、民意を反映する直接選枠は縮小する。
 また選挙委や行政長官、立法会の候補者に対する資格審査委員会を新設し、香港への忠誠の宣誓などを要件とする。民主派排除の姿勢は一貫している。「愛国者による香港統治」を確実にして、親中派が政界の圧倒的多数を占めることを狙う。
 中国の強権姿勢への反発は、民主派の2019年区議会選挙での圧勝や、立法会の過半数獲得を目指した予備選などに表れてきた。
 こうした動きに対し、習近平指導部は「香港を混乱させる反中勢力」が香港の統治権を奪おうとしているとして、中央主導で選挙制度の改変へ乗り出した。民意を排除して強権支配を図ることを志向する。
 決定を受けて、全人代常務委員会は基本法の付属文書の改正に着手する。新たな選挙制度が決まり次第、香港政府が関連の法整備に入るという。昨年から1年延期された立法会選挙は再延長される見通しだ。
 自由で公正な選挙制度は民主主義の根幹となる。権力が恣意(しい)的な運用をしてはならない。米欧諸国からの批判に中国は「内政」の立場を崩さないが、一国二制度の理念に反しているのは明らかだ。
 国安法による香港の民主派弾圧や、新疆ウイグル自治区での人権侵害に国際社会の懸念が強い。中国に対する見方は厳しくなる一方だ。
 21年度の国防費は前年比6・8%増の22兆6千億円規模になる。軍民の垣根を取り払う融合政策のため、この巨額でも一部にとどまり、全体像は不透明だ。外国船舶への武器使用を認めた海警法も、国際法に合致していると正当化している。
 バイデン米政権は中国を唯一の競争相手と位置付けるなど、国際社会との摩擦は強まっている。中国は今世紀半ばに世界の中の「強国」になる目標を掲げるだけに、覇権的な姿勢を強めるとみられる。自国の利益ばかりを追うような振る舞いでは孤立を深めることになる。

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