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2021.03.12 08:00

【大震災10年】教訓忘れず生き延びたい

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 10年前の東日本大震災発生は、激しい揺れと巨大津波の猛威を見せつけた。「決して人ごとではない」。近い将来に南海トラフ地震が起こることを思い、恐怖を感じた高知県民は多かっただろう。
 翌年の2012年、南海トラフ地震の被害想定に関し、県内にショックが走った。最悪の場合、幡多郡黒潮町は高さ34・4メートルの津波に襲われる―。県内に30メートル級の巨大津波が押し寄せる国の推計が発表された。
 2013年には、高知県が県内の想定死者数を公表し、その数は「最大4万2千人」にも上った。
 しかし、私たちが備えれば災害から命を守ることはできる。犠牲者を一人でも減らし、限りなくゼロに近づけなければならない。
 県はこの10年、行動計画を立て、その命を守る対策を進めてきた。市町村のハード整備を後押しし、避難路・避難場所は1445カ所が整った。避難タワーは114基が立ち、134基まで整備が進む予定だ。
 それらの結果、県が想定する死者数は当初と比べて74%減の1万1千人に抑えられた。県は2021年度末までの第4期行動計画で5880人まで減らす目標を掲げている。
 達成に向けて課題は多い。県内の住宅耐震化率は10年前の72%から84%に上がったが、全国平均(87%)に届いていない。今すぐ大地震が起きれば、建物倒壊で3千人以上が命を落とすと想定されている。
 防災意識の低下も懸念される。地震発生後、いつ避難行動を起こすか。県の県民世論調査で「揺れが収まった後すぐに」と答える人が減っている。2016年度の73・3%から、2020年度は65・1%に下落した。
 年代が上がるほど「津波警報が出たら」「市町村から避難の呼び掛けがあったら」と答えた。全世代でもう一度「揺れたら逃げる」原則を徹底したい。その上で、高齢者や障害者ら支援が必要な人の避難対策を強化する必要がある。
 ハード整備が進んでも、災害に強い地域づくりの根幹は「人」である。鍵を握るのは、日頃から地域で防災に取り組んでいるかだ。大規模災害時には、避難所は住民主体で運営する必要がある。女性や外国人、性的少数者らの要望を取り入れ、避難所環境の改善も図っておきたい。
 被災前にまちづくりの手順などを検討する「事前復興計画」の策定も進めるべきだ。東日本大震災では、この準備が不十分で復興事業の着手に時間がかかり、生活再建や産業の回復が遅れてしまった。自治体は住民と協働して、策定に向け課題を洗い出すことが欠かせない。
 東北では、愛する人や地域社会を失った人々の傷がいまだ深い。発生10年の節目に改めて、被災地の現状に胸を痛めた県民も多いだろう。
 その気持ちを南海トラフ地震に備える行動につなげたい。住宅の耐震診断を受けたり、地域の防災訓練に参加したり、あなたの第一歩が自らや家族の命を守る。東日本大震災の教訓を忘れず、県民みんなで「その日」を生き延びたい。

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