2021.03.10 08:12

【なるほど!こうち取材班】東日本大震災10年 脱原発望む層増加 全国地方紙協働「#311jp」アンケート

廃炉が決まった四国電力伊方原発1号機=手前左。3号機=奥=は今夏の再稼働に向けた手続きが大詰めを迎えている(愛媛県伊方町=2014年1月撮影)
 2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生10年を前に、高知新聞「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)など読者参加型の報道を展開する全国29の地方紙は、連携企画「#311jp」として、原発・エネルギー政策や防災意識に関する二つのアンケートを実施した。自由記述欄などに寄せられた高知県回答者の意見とともに紹介する。

 暮らしの疑問や地域課題の解決を目指す「JOD(オンデマンド調査報道)パートナーシップ」の取り組み。無料通信アプリ「LINE(ライン)」などを通じて実施した。

「廃炉にすべき」6割【原発・エネ政策アンケート】
 「原発・エネルギー政策」は2月8~17日まで呼び掛け、47都道府県の6248人が回答(うち高知県108人)。「防災意識」は昨年11月1日から1月31日の間、40都道府県の1699人が回答(うち高知県73人)した。いずれも一般的な無作為抽出の世論調査とは異なる。

 原発・エネルギー政策アンケートで、福島原発事故からの10年間で原発に対する考え方が変化したかを尋ねたところ、「今も変わらず反対」が最多の44・8%。次が「賛成でも反対でもなかったが、反対に傾いている」(13・9%)。「賛成だったが、一定程度縮小しても良い」(12・3%)、「賛成だったが、今は反対だ」(10・2%)と続き、脱原発を望む層が増えている。

 今後の原発政策については、「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」が最多の43・1%で、「すぐにでも全国的に廃炉にすべきだ」が17・4%。一方、運転延長や増設、建て替えといった「原発容認」は14・9%にとどまった。

 事故発生の11年3月時点で国内の原発は17原発54基。老朽化もあり、このうち21基の廃炉が決まり、再稼働したのは9基にとどまる。

 原子力規制委員会の審査を終えた原発再稼働の同意・了解について尋ねると、「立地自治体に加え、周辺自治体も加えるべきだ」が86・1%で、幅広い合意形成を望む意見が大勢を占めた。

 原発事故時の避難計画の実効性確保についても「難しい」「どちらかと言えば難しい」が合わせて57・5%となる一方、「可能」「どちらかと言えば可能」は計18・2%にとどまった。

 菅義偉首相は「温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする」と目標を掲げ、電源構成などを定める国のエネルギー基本計画の議論も始まった。それに関連し、再生可能エネルギーの普及については「期待する」「ある程度期待する」が合わせて84・9%に及んだ。

 さらに、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減手法として複数回答で聞いたところ、「洋上風力など再エネ拡大」(73・2%)、「電気自動車(EV)など需要面の変革」(48・7%)、「液化天然ガス(LNG)などCO2排出量が少ない火力の活用」(39・4%)と続いた。

 北海道では、原発から出る「高レベル放射性廃棄物」の地層処分場建設を巡り、地元調査が始まった。複数回答で意見を聞くと、最多が「必要性は理解するが、安全性は疑問」(48・8%)。次いで「核燃料サイクル政策などの見直しも必要」(35・1%)、「住民投票で合意のない調査は進めるべきではない」(33・4%)、「処分場は必要なので注視したい」(33・3%)が並んだ。

【明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話】冷静な見方拡大
 福島第1原発事故から10年で「脱原発」を求める理由は変わってきた。かつては恐怖心が先に立ったが、今は未解決の「核のごみの問題」を掲げる人が増えてきた。実際、事故前を大きく下回る基数の原発稼働が常態化する中、「それほど必要ではない」という冷静な見方が拡大した。ただ、こうした声はあまり政策に反映されておらず、政府が原発を推進しようとすれば、理由を丁寧に説明する必要がある。

災害時の家族の集合場所6割未定 被災3県も5割超【防災意識の変化アンケート】
 防災意識の変化に関するアンケートでは、災害時にばらばらになって逃げた後の集合場所を、あらかじめ家族で決めているかを質問した。決めていない人は岩手、宮城、福島の被災3県で51・8%、3県以外で60・9%。携帯電話の不通で連絡が取れず、再会に苦労した震災の経験が、被災地も含めて生かされていない実情が浮き彫りになった。

 災害時の避難場所を「知っている」は被災3県92・8%、3県以外85・3%といずれも高く、備えの意識は浸透していた。ただ、居住地の災害リスクの把握に欠かせないハザードマップの内容を「理解している」のは被災3県で45・8%、3県以外は36・9%にとどまった。

 東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害情報学)は「避難後の集合場所を決めておくことは震災の重要な教訓。津波てんでんこ(津波の時は一人一人がばらばらに逃げろ、という三陸地方の教え)と一緒に浸透するのが理想だ」と指摘。ハザードマップの理解度が低いことに「避難所を知っていても、災害によっては対応していない可能性がある。マップできちんと確認してほしい」と注意を促した。

 「被災3県の復興が着実に進んでいるか」との質問について「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計が被災3県53・0%、3県以外28・2%と倍近い開きが出た。三陸沿岸道の建設が進み、災害公営住宅が各地で完成するなど「復興」が目に見える形で実感できる被災3県との差が浮き彫りとなった。

 震災をきっかけに生まれた被災3県との関わりも聞いた。3県以外の主な回答は「募金や被災地の物品購入」(50・2%)、「ボランティアや旅行で訪れた」(21・2%)だった。「特に変化はない」は36・9%。

高知県民の声「人ごとでない」「常に避難意識」
 地方紙による連携企画「#311jp」で実施した防災意識アンケートでは、南海トラフ地震への備えが進む高知県から73人が回答。「あなたにとって『3・11』とは」との問いに、「人ごとではない」「常に避難を意識するようになった」と地震防災を身近に考えるきっかけになったとする声が相次いだ。

 「幸い実家も親族も全員無事だったが、あの恐怖をもう一度高知の人が経験するのかと思うと…」

 震災当時、宮城県に住んでいたという高知市の主婦(42)は「耐震はもちろん大事。何より津波から逃げてほしい。生きてればなんとかなる」と訴える。

 香美市の主婦(68)は関東旅行中だった。激しい揺れや停電、交通網の分断に遭遇し、「お世話になった避難所、羽田空港のテレビで初めて知った震災の現状を一生忘れられない」と振り返った。

 「日本社会の転換点だった」とする高知市の男性公務員(47)は「原発のような危険なものが地方に押し付けられたり、我慢を強いられるのはおかしい」と指摘した。

 高知市の女性会社員(42)は「政治家の振る舞いや国の復興政策を見る中で、弱い立場に置かれた人々の声がどれほど届きにくいものか、考えさせられた」。遠くに感じていた政治の重要性に気付かされたという。

 5歳の時に昭和南海地震を体験したという高知市の男性(79)は、地域の防災訓練の案内がなく、避難先を知らないといい、「高齢夫婦で膝の具合が悪く、歩行につえが必要な状態だ」と不安を訴える。

 長男が産まれて10日目が「3・11」だったという高知市の女性会社員(38)は「将来地元で起こるであろう(被災地の)映像に冷や汗が止まらなかった。『子どもが生まれたのがついこの前』と感じるように、この先どれだけ時間がたっても、あの日の無力感は風化しない」と振り返った。(大野泰士)

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