2021.03.07 08:00

【ネット広告】透明性と公正さが必要だ

 巨大IT企業が展開するインターネット広告の取引実態について、公正取引委員会は最終報告書をまとめた。取引先や一般利用者に対して、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあるなどと指摘し、問題となり得る行為を例示した。公取委が、巨大IT企業の市場支配力が強まる現状を問題視する姿勢を打ち出したといえる。
 米国のグーグル、フェイスブックなど「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業は、ネット検索や会員制交流サイト(SNS)などで無料のサービスを提供する。そのサービスを通じて集めた個人情報やサイトの閲覧履歴などの膨大なデータを生かし、利用者の関心に沿うような広告を表示させている。
 自社のウェブサイトで広告主と利用者を結び付けるだけに、ネット広告で大きな力を握っているといっていい。ネット広告は成長を続け、2019年には国内の総広告費約7兆円のうち、2兆円余りと約3割を占めるほどになった。
 とりわけ検索に連動して表示される広告では、グーグルが70~80%の占有率を持つほどだ。独占、寡占化の傾向が鮮明になるとともに、弊害も目立つようになっている。
 報告書はネット広告に関する巨大IT企業の取引先、利用者へのアンケートを収めている。取引先、利用者とも不満は少なくない。「広告の掲載基準を満たしているのに掲載を拒否された」「別のIT企業との提携の解消を迫られた」「取得した個人情報の利用目的が明確に示されていない」などの指摘があった。
 巨大IT企業側は「利用規約は適切に表示されている」などと説明してはいる。ただ、取引先や利用者からは、力を背景に不利益を押し付けているとみられているのが現実だろう。公取委の問題意識もその点にあるとみていい。
 自由な発想と技術力で現在の地位を築き上げた巨大IT企業にしてみれば、過剰な規制は技術革新の妨げになるとの考え方が強いかもしれない。しかし、取引先や利用者らの不満がさらに広がれば、規制が強まることになりかねない。
 個人データ収集に対する批判の高まりを受けてだろう、グーグルは個人の閲覧履歴を追跡する技術を使用しないことを明らかにした。プライバシー保護を優先するという。
 日本で先月、巨大IT企業を規制する新法が施行された。大規模なオンラインストアやアプリストアを運営するには届け出が必要となり、契約条件の開示も義務付けた。欧米でも巨大IT企業の支配力への懸念は強くなっている。
 市場は取引先、利用者あってのものである。誰もが安心して利用できる仕組みが必要だ。ネット広告も透明性と公正さが求められていると考えなければならない。
 巨大IT企業のサービスは世界中の人々にとって、生活に欠かせないインフラ的な存在だといえよう。事業の運営にはさまざまな面で重い責任がつきまとう。

カテゴリー: 社説

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