2021.03.04 08:00

【ミャンマー情勢】国軍は国民弾圧をやめよ

 ミャンマー国軍によるクーデターへの抗議デモに対し、治安当局は実力行使による弾圧を強化し、銃撃で多数の死傷者がでている。国民への弾圧を直ちにやめ、アウン・サン・スー・チー氏らの解放を求める。
 反軍政デモは全国に広がる。数百万人規模になることがあるようで、主要道路が人で埋め尽くされる様子が報じられてきた。ゼネストも呼び掛けられ、商業施設や工場が軒並み休業したという。
 参加者の中には、民主主義の下で育ったので軍政は受け入れられないと話す若者や、「不服従運動」に賛同して職務を放棄する公務員や医療従事者らがいる。尊敬の対象とされる僧侶も加わっている。
 これに対し、治安部隊は威嚇射撃を繰り返してデモ隊を強制排除したり、拘束したりしている。実弾で撃たれたとみられる死者のほか、多くの重軽傷者がでている。
 逃げ惑う市民の様子などが会員制交流サイト(SNS)に投稿され、国軍への反発をさらに強めている。デモ参加者は非暴力に徹し、挑発に乗らないように互いに呼び掛けているようだ。その姿勢を崩さないよう自制した対応が必要だ。
 国軍側も、抗議デモがこれほど長期化するとは思っていなかったとの指摘がある。いらだちは高圧的な対応に転じかねない。治安当局はさらなる犠牲者をださないために実力行使を慎まなければならない。
 昨年11月の総選挙で、スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は単独過半数の議席を確保した。クーデターが起きた2月1日には、国軍の政治的影響力を保証する憲法の改正を公約に掲げていたNLDの第2次政権が発足する予定だった。
 NLDの政権運営はめぼしい実績がなかった。それにもかかわらず過半数を獲得できたのは、民主化への国民の強い支持であり、軍の権益排除への期待だろう。
 スー・チー氏は違法に輸入した無線機を使ったとされる罪に問われ、さらに新たな容疑で訴追された。長期間拘束することで、政治的影響力の低下を狙っているとみられる。司法は民政移管で独立しているが、軍政が全権を掌握したことで変更された可能性があり、公正な裁判が行われるかさえ疑われる。
 軍事政権に正統性はない。国際社会の協調した行動が求められる。しかし、米欧が国軍への制裁へ動く一方、中国は非難を避けている。東南アジア諸国連合(ASEAN)は暴力抑制を求めたが具体策には踏み込まず、関与に消極的な国もある。
 日本は政府開発援助(ODA)の新規案件は当面停止する方向で、先進7カ国(G7)内の足並みをそろえる。だが経済的な影響を抑えるために制裁には慎重だ。ならばなおさら、危機的状況を脱するための外交に努めなければならない。
 日本は、支援実態が不明な中国を除くと最大の支援国で、これまでに国軍との間に築いたパイプがある。他国とは異なる働き掛けができる立場を生かして収拾へ導きたい。

カテゴリー: 社説

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