2021.02.26 08:00

【生活保護減額】「違法」重く受け止めよ

 生活保護費を引き下げる際の国の手法を厳しく戒める判決である。
 2013~15年の生活保護費の基準額引き下げを巡り、大阪地裁は国に裁量権の逸脱や乱用があるとし「違法」と判断。大阪府の受給者らへの引き下げ処分を取り消した。
 生活保護は困窮者のための最後のセーフティーネット(安全網)である。国に都合の良い手法で引き下げることは許されない。
 判決は国が基準額引き下げの起点を08年としたことを問題視した。同年は世界的な原油や穀物価格の高騰で、特異な物価上昇が起きている。この年を起点にすると、その後の物価下落率が大きくなることは明らかである。
 引き下げの根拠として消費者物価指数ではなく、厚生労働省が独自に算定した指数を使っていたことも批判した。厚労省の指数は、生活保護世帯で支出割合が低いテレビやパソコンなど教養娯楽用品が基にされている。これにより物価下落率は消費者物価指数の2倍以上となった。
 これでは「引き下げありき」とみられても仕方ないのではないか。厚労相の引き下げ判断について、大阪地裁判決が「客観的数値や専門的知見との整合性を欠く」と断じたことにもうなずけよう。
 生活保護費の引き下げは、安倍前政権が13年に決めた。背景にはリーマン・ショック以降の受給世帯の急増や、消費税増税をにらんで社会保障費の抑制が迫られていたことがある。収入のある芸能人の親族が受給していたケースが明らかになり、受給者への偏見や自己責任論が強まった経緯もあった。
 しかし、生活保護は憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する最後のとりでだ。保護基準は、住民税の非課税限度額や就学援助の対象者らを決める際の指標にもなっている。
 引き下げはこれら公的保護の対象縮小につながった。国民生活に与える影響は大きい。財政難のしわ寄せを、社会的弱者に押しつけるようなことはあってはならない。
 現在、新型コロナウイルス感染拡大で仕事を失ったり、収入が激減したりする人が増えている。だからこそ生活保護基準は困窮者の生活実態に即した、適正な手法で算定されなければならない。国は大阪地裁判決を重く受け止め、算定基準の見直しに踏み出すべきである。
 生活保護を巡っては、必要とする人の約2割しか受給していないとの指摘もある。申請時に本人の親族に援助できないかどうかを確認する「扶養照会」があり、「親族に知られたくない」と考える困窮者が生活保護の利用をためらうからだ。
 このため田村憲久厚労相は照会手続きを緩和し、弾力的に運用する方針も示している。
 健康で文化的な最低限度の生活とはどんなものか。それが誰にも保障されるにはどうすればいいか。国は公正、公平な制度づくりに努めなければならない。「公助」の在り方が問われている。

カテゴリー: 社説

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