2021.02.24 05:00

【嫡出推定見直し】無戸籍解消に欠かせない

 法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめた。
 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定の例外として、母が出産時点で再婚していれば「現夫の子」とする。前夫が父となるのを拒む母が出生届を出さず、無戸籍者を生む要因となっていた。女性のみに離婚後100日間の再婚を禁じていた規定も撤廃する。
 家族の多様化が進む時代。不利益を被る者が出ないよう、見直しを進めるのは当然である。
 嫡出推定は1898年施行の明治民法から引き継がれてきた。扶養義務を負う父親を早く確定させ、子どもの利益や権利を保護する目的があった。
 しかし夫の暴力から逃げ出した女性が、離婚協議が終わらない間に別のパートナーと子をもうけることもある。この場合、「前夫の子」とみなされるのを避けて出生届を出さない事例が近年相次いでいる。
 法務省が把握している無戸籍者は1月時点で901人いるが、7割以上が嫡出推定を避けたケースだ。支援団体によると、実際には少なくとも1万人はいるという。
 無戸籍者は進学や就職、結婚など実生活で困難を強いられる。大阪府では昨年9月、無戸籍とみられる高齢女性が餓死しているのが見つかった。同居の息子も無戸籍で、行政への支援を求められず救急車も呼べなかったと話している。
 無戸籍の人たちをこれ以上増やさないために、嫡出推定の見直しは避けて通れない。
 DNA型鑑定により、100%に近い形で生物学的な親子関係を明らかにできる時代でもある。120年以上前の規定が残っていたこと自体、おかしいと言わざるを得ない。
 再婚禁止期間を巡っても、これを設けている国は少ない。国連の女性差別撤廃委員会から、廃止勧告も受けている。撤廃しない理由はないだろう。
 嫡出推定を覆すには「嫡出否認」の訴えを起こさなければならない。これも現行では夫のみ出生から1年間認められている。試案はこの権利を未成年の子と、その代理として母にも広げ、提訴期間も延長する。
 一連の改正は家族の在り方の多様化や男女平等に沿う内容といえる。現代の家族観を反映した法律への転換点となるものだろう。
 むろん、これで十分というわけではない。
 「300日規定」の例外として救済されるのは、再婚したカップルだけである。事実婚や、何らかの事情で結婚に至らなかった場合は前夫の子と推定されてしまう。再婚していない場合について、中間試案は「引き続き検討する」と言及するにとどまっている。
 法制審は意見公募を経て最終案をまとめる。法務省は来年の通常国会への改正法案提出を目指す。時代に即した最善の法制度を検討しなければならない。

カテゴリー: 社説

ページトップへ