2021.02.22 08:00

【睡眠剤混入】医薬品の安全性を守れ

 人命にかかわる医薬品の製造において、絶対である安全性が軽視された。あってはならない不正である。
 爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入した問題で、福井県は医薬品医療機器法に基づき、福井県あわら市の「小林化工」に116日間の業務停止命令を出した。
 製薬会社への行政処分として過去最長だ。同社は当初、人為的なミスと説明していた。しかし、県と厚生労働省などの立ち入り調査で、ずさんな医薬品製造を組織的に行っていた実態が分かった。
 40年以上前から品質試験の結果を捏造(ねつぞう)したり、製造記録を偽造したりといった法令違反が横行し、経営陣も黙認してきた。順法意識が欠如していると言わざるを得ない。
 飲み薬1錠当たりに最大投与量の2・5倍もの睡眠導入剤成分が混入していた。高知県を含む27都道府県の230人以上が意識障害などの健康被害を受けた。因果関係は不明だが、高齢の男女2人が亡くなっている。服用後に車を運転した人が人身事故を起こした例もあった。
 混入は昨年6月24日に起きた。原料をつぎ足す際、容器を取り違えて睡眠導入剤成分を投入した。原料の計量は2人一組で確認する内部規定のところを1人で作業していた。
 そもそも、原料のつぎ足し自体が国から承認されていない工程だった。同社では、それを公然と社内の手順書に盛り込んでいた。
 品質試験もなおざりにされていた。混入があった際も異常を示すデータが検出されていたが、そのまま見過ごして出荷していた。
 健康被害をきっかけに、同社の長年にわたる不正が発覚した。県の調査を逃れるために製造記録を偽造しており、その数は製品の8割近い約390に及んでいる。
 製薬会社が持つべきモラルが欠如している。同社社長は記者会見で「医薬品の安定供給を口実に、問題の是正を後回しにしてきた」と説明した。薬を使う患者の体よりも経営の都合を優先している。業界からの退場を考えるべきではないか。
 同社はジェネリック医薬品(後発薬)メーカーだ。後発薬とは、特許が切れた先発薬と同じ成分で作る安価な薬である。国は医療費削減のために推奨してきた。患者側の認知度も高まり、今や先発薬しかない医薬品を除けば、後発薬が使われる割合は8割近くに拡大した。
 業界が品質向上の努力を重ねて信頼を築いてきた結果である。ただ、需要が急増したことで、製造工程の人材育成などが追い付いていない側面も指摘されている。
 行政のチェック体制を強化しなければならない。今回、福井県は年2~4回の定期検査を実施していたにもかかわらず、同社の不正を見抜けなかった。厚生労働省は都道府県に対し、無通告の立ち入り調査を増やすなどの対策を求めた。
 官民を挙げて、再発防止と信頼回復に努力せねばならない。全ての根本となるのは、安全性を最大限に追求する製薬会社のモラルである。

カテゴリー: 社説

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