2021.02.21 08:25

【地震新聞】減災へハード整備多重化 東日本大震災10年

高知県内取り組み確認 堤防は宝永級が基準 救援路の確保対策も進行
 数々の「想定外」をもたらした東日本大震災を受け、高知県内では南海トラフ地震に備えた津波対策などハード整備が加速した。最大震度7の揺れと広範囲に及ぶ津波の被災をいかに抑えるか。堤防の整備や救援ルートの確保など、早期の復旧復興を見据えた多重的な対策が続く。

 国内の防災対策は震災が起きる10年前まで、過去数百年のスパンで起きた国内最大級の地震・津波を基準にしてきた。

 震災から半年後の2011年9月、中央防災会議の専門調査会の報告書は、そうした従来手法の「限界」を示し、今後想定される地震について2段階の考え方を導入した。

 一つは、発生頻度が数十~百数十年で、津波高は比較的低いものの、大きな被害が起きる「レベル1」。もう一つは、頻度は低いが甚大な被害をもたらす「レベル2」だ。

 県内の堤防整備もこの考えに基づき、1707年の宝永地震(マグニチュード8・6)級をレベル1とし、このクラスの津波が来ても越えない高さに整備することを基本に据えた。

高知新港近くの沿岸に敷設された堤防(高知市仁井田)
 堤防はかさ上げに加え、津波の力を受けたり、液状化により地盤が変形したりしても、堤防としての機能が維持される「粘り強い構造」が採用された。

 レベル2対策は堤防について、津波が背後地に到達する時間を遅らせる効果を見込む。同時に、避難場所の整備や平時の避難訓練など、ソフト面と組み合わせた減災対策が中心になった。

 県は2013年、沿岸部59区域にそれぞれ対策の基準となる「設計津波」を設け、それに沿って堤防の整備を進めている(地図参照)。

 高知市の浦戸湾周辺で工事中の区間では、堤防の高さを60センチ~1・5メートル上げ、さらに「三重防護」とする事業が17年にスタート。国土交通省四国地方整備局の高知港湾・空港整備事務所によると、沖合防波堤を除いた進捗(しんちょく)率は事業費ベースで2割ほど。31年度完了を目指している。


▼限界への備えを
救援ルート確保に向け橋脚の補強工事が行われている宇佐大橋(土佐市宇佐町福島)
 大地震が起きると、救命活動や支援物資の搬送には救援ルートの確保が欠かせない。県は、緊急輸送路上にある橋の落下対策を進めてきた。

 対象は、耐震補強の基準が強化された1980年より前にできた橋。県内で対策が必要とされた橋は104あり、橋げたのずれや橋脚の倒壊を防ぐ補強がほぼ完了している。

 ただ、2016年の熊本地震では橋げたを支える部分に段差ができ、通行に支障が出るケースが続出した。これを受け、18年度からは補強済みを含む184橋に、被害が出ても早期に復旧ができるよう工事を進める。

 四国地方整備局によると、国管理の県内310橋(長さ15メートル以上)のうち270橋で対策済み(20年3月末時点)。残る40橋は21年度末の完了を目指している。

斜面崩落防止のため敷設された落石防止ネット(仁淀川町森)
 一方、地震や大雨で起きる斜面の崩落防止は、落石防止のネット敷設やコンクリート擁壁などの工事を終えたのは県内471カ所(同)。これは1996年に洗い出された2554カ所のうち、18・4%にとどまる。

 県道路課は「年間20億円規模の予算は確保しているが、県内は山間部が多く、年間10カ所ほどしか進まない」と説明。交通量の多い輸送路を優先し、対策工事を急ぐという。

 防災・減災へ、ハード整備は今後も進む。ただ、中央防災会議の専門調査会の座長を務めた河田恵昭・関西大社会安全研究センター長は「ハード整備はコストと時間がかかり、完成まで効果が十分発揮されないのが難点」と指摘。「完成し、被害をシャットアウトできると過信するのは絶対にいけない。津波からの早期避難など、ハードの『不十分さ』を意識した備えが重要だ」と訴えている。(海路佳孝)

ページトップへ