2021.02.20 08:00

【橋本組織委会長】逆風下で問われる決断力

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長に、五輪相だった橋本聖子氏が就任した。女性蔑視発言で辞任した森喜朗氏の後任となる。
 7月23日の開幕が近づいている。3月25日には聖火リレーがスタートする予定だ。だが新型コロナウイルスの収束は見通せない。ただでさえ、コロナ下での開催に懐疑的な見方が広がっている。
 森氏の発言や記者会見での言動、後任会長を巡っての「密室人事」に国内外から批判が集まった。東京五輪のイメージに傷がついたことは否めない。
 混乱を収め、新会長選出を急ぐ必要があったことは理解できる。橋本氏は冬季、夏季で計7回の五輪出場経験があり、スピードスケートで銅メダルを獲得している。
 一方で、ソチ冬季五輪の打ち上げパーティーでの醜聞もある。それでも組織委の武藤敏郎事務総長が挙げた「五輪・パラリンピック、スポーツに対する深い造詣」といった5項目の基準からは外れていない、とみていいだろう。
 何よりも透明性が求められた選考過程は問題を残した。後任会長を選ぶ候補者検討委員会の顔ぶれや会合の模様は非公開とされた。人事を扱う会合である点は分かるが、なぜ橋本氏を選んだのか、他の候補が誰で、どう比較したかなどは明らかにされていない。
 橋本氏が政治との距離を保てるかにも懸念が残る。自民党に離党届を出したが、参院議員は続ける考えだ。五輪憲章は政治的中立を求め、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も重視している。
 森氏との関係も気になる。1995年の参院選で初当選した橋本氏に政界入りを勧めたのが当時、自民党幹事長だった森氏だ。橋本氏は森氏を「政界の師」と仰ぎ、一昨日の就任会見ではアドバイスを求める考えも明かした。前任者でもあるとはいえ、緊張感を欠くことがあれば、疑念を招きかねない。
 そもそも、あからさまに介入したといえるのが菅義偉首相だ。森氏の発言を「芳しいものではない」などと批判したが、当初は一定の距離を置く姿勢だった。ところが森氏の辞任後、後任は「女性」「若手」を希望したという。これで橋本氏選出への流れが固まったとみられる。
 一連の問題は日本の政界、スポーツ界に残るあしき体質をあらわにしたともいえる。
 男女平等への感度の鈍さ、重要な事柄を決めるのに透明性や説明責任を欠く点などである。相次ぐボランティア辞退に危機感は乏しく、世論との隔たりも印象づけた。
 逆風の中、橋本氏は、多くの問題に直面することは間違いない。医療従事者やワクチンの確保、検査態勢などコロナ感染防止策は難問だ。東京五輪への世論の理解を広げる役割も求められよう。
 いずれ開催について、決断力が問われる重大局面に向き合うことも予想される。当然だが言動には厳しい目が注がれている。

カテゴリー: 社説

ページトップへ