2021.02.14 08:45

ちいきのおと(7)尾川地区(佐川町) お菓子作りに“全力投球”

「おかしの家 Repos」を経営する山崎太貴さんと母親の美佐江さん=奥 (写真はいずれも佐川町本郷耕)
「おかしの家 Repos」を経営する山崎太貴さんと母親の美佐江さん=奥 (写真はいずれも佐川町本郷耕)

ソフト全中V 山崎さん開業「わざわざ来たい店に」
 高知県高岡郡佐川町の尾川地区。コンビニもない山あいの集落に昨秋、おしゃれなケーキ屋さんができた。店主はソフトボールの豪腕投手として鳴らし、尾川中学校で全国優勝も果たした山崎太貴さん(29)。今はパティシエとして、繊細な菓子作りに“全力投球”している。

 尾川郵便局の東約600メートル。柳瀬川と県道を見下ろす土地に「おかしの家 Repos(ルポ)」はある。れんが調の壁やテラスが、南国の別荘のような雰囲気だ。

ショーケースに並ぶさまざまなケーキ
ショーケースに並ぶさまざまなケーキ

 店内にはマスク越しにも感じられる甘い香り。ショートケーキにガトーショコラ、ロールケーキ、マドレーヌ…。見ているだけで心が浮き立つような菓子が並ぶ。

 「イチゴやクリ、レモン…季節に応じて地元の果物を使っています」と山崎さん。尾川中、高知農業高を経て龍馬学園(高知市)の製菓製パン科に進み、卒業後は高松市や大阪の店などで約8年修業。昨年9月、祖父が所有していた土地を活用して長年の夢だった古里での開業をかなえた。

 ◇ 

 尾川地区は昔からソフトボールが盛んで、山崎さんも小学1年から競技を始めた。尾川中学校では佐川町内の黒岩中(現在は休校)との連合チームで2番手投手として、2006年の全国中学大会優勝に貢献した。

 高知農業高校ではエースとして活躍し、2008年の県体3位決定戦でノーヒットノーランを達成。3年時には2009年国体少年男子のメンバーに選ばれた。県チームは見事優勝したが、山崎さんは「代打で1打席だけ。他のメンバーがすごすぎた」。高校卒業後もソフトの道へ―とは考えなかったという。

 その代わり浮かんだ進路は、体育会系のイメージとはほど遠いパティシエ。菓子作りが趣味だった母、美佐江さん(58)の影響で、ソフト漬けの学生時代もクリスマスにはケーキを作るのが恒例だった。楽しかったその記憶に背中を押され、「一生続けていく仕事にしよう」と決めた。

 ◇ 

 オープンから約5カ月。町の中心部から離れているため不安もあったそうだが、町内外から客を呼び、リピーターも生まれた。1日100~150個ほどのケーキが売れる好調ぶりで、昨年のクリスマスは180個の予約が入った。

 地区住民は「よそに買いに行かなくてもよくなった」「記念日は絶対にここで買う」と歓迎。山崎さんは「佐川町の人でも、尾川には来たことがなかったというお客さんもいる。ちょっとは地元に貢献できているかな」とはにかむ。

 Reposはフランス語で、休息や安らぎを意味する。「わざわざ来たいと思える店。かしこまった感じにせず、誰からも好かれる温かい店にしたい」。そんな思いが込められている。

 営業は午前10時~午後7時。水曜定休。不定休もあり、情報は写真共有アプリ「インスタグラム」で発信している。(佐川支局・楠瀬健太)


《自慢のイッピン》
軽く優しい味わい「きらず餅」

 餅におからを混ぜて粒あんを包み、キビ粉をまぶす「きらず餅」。普通の餅よりも粘り気が少なく軽い口当たりで、優しい甘さが広がる。

 きらずとは昔のおからの呼び方で、餅は尾川地区の発祥らしい。地元の田村美恵子さん(92)は母親から作り方を教わった。40年ほど前、佐川町の依頼で周囲に紹介してから、町外のイベントなどでも売られだしたという。

 現在は地区の女性グループ「キッチンやまぼうし」がレシピを継承。配食サービスのメニューの一つとして、4個入り200円で販売している。

 メンバーの森田美智子さん(76)は「カロリーが少なくヘルシー。若い人にも伝えたい」と伝統の味を守っている。


《ナイショのメイショ》
尾川城跡

 尾川地区の集落活動センター「たいこ岩」から北の山を眺めると、山頂近くにピンクの旗がたなびく。尾川城跡の目印だ。

 佐川町発行の「わが町の文化財と旧跡」などによると、戦国時代の武将、近沢将監(しょうげん)(生没年不詳)が城主として治めていた。主君の長宗我部氏が滅亡後、将監は国外に去り、尾川城も廃城になったとされる。

 30分ほどかけて登ると、約300平方メートルの開けた場所があり、標高約300メートルからの眺めを楽しめる。同地区活性化協議会は新たな名所にと、5年ほど前から道しるべや階段などを整備中。集落支援員、沢村一己さん(71)は「住民が気軽に上がれる場所にしたい」と汗を流している。


《ちょっとチャット》
西森智香(ともか)さん(15)尾川中3年

 3年生4人の中で女子は私だけ。でもみんな保育園の時から一緒で全然気にならないです。中学ではバレー部のキャプテンをしてて、つらかったときは同級生が支えてくれました。高校では兄もやっているソフトボールに挑戦したい。卒業してみんなと離れるのはちょっと寂しいけど、ワクワクの方が大きいです。


 尾川地区は佐川町西部に位置し、九つの集落で構成されている。旧尾川村が1954年、佐川町に編入合併された。尾川小中学校は小中一貫教育に取り組む。1月末現在、384世帯714人。

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