2021.02.14 08:00

【WTO改革】機能不全からの脱却急げ

 半年近くも空席だった「自由貿易の番人」のトップが決まった。世界貿易機関(WTO)の次期事務局長にナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相が就任する。
 WTOは存在意義を問われている。貿易紛争を処理する上級委員会は、改革を要求する米国の反対で欠員が補充できず、2019年12月から審理ができなくなっている。
 オコンジョイウェアラ氏はリーダーシップを発揮し、WTOの機能回復を急ぐ必要がある。
 初の女性事務局長であり、アフリカ出身者としても初の就任となる。一般理事会で全164の加盟国・地域の同意を得て正式承認される。
 事務局長選では当初から本命視されていた。しかし、WTOに不満を募らせていた米国のトランプ前政権が反対し、トップの不在が続くという異例の事態になっていたが、米国が推していた韓国の女性候補が撤退を表明。米バイデン政権がオコンジョイウェアラ氏の支持に方針転換したことで決着した。
 新たな事務局長がどこまで改革に踏み込めるのか注目される。紛争解決制度の見直しが焦点になろう。
 WTOでは貿易紛争の提訴があれば、2国間での協議後、解決しないと「一審」に当たる紛争処理小委員会で審理する。その判断に不服がある場合は「最終審」の上級委に持ち込むことができる。
 米トランプ前政権は、上級委は中国など新興国寄りの判断が目立つと主張。一方で、欧州連合(EU)は貿易紛争の増加や複雑化に対応するため、上級委の増員や任期の延長など体制の強化を求めている。
 日本は、上級委での敗訴を覆すための手続きがないことを問題視している。福島第1原発事故を受けて、日本産水産物の輸入を禁止した韓国の措置を巡り、小委員会では日本が勝訴したが、上級委で逆転敗訴となった経緯がある。
 WTOには貿易のルールを定め、守られているかを監視する役割もある。途上国は優遇されるが、その地位は自己申告制で、中国などもいまだ途上国の扱いだ。改革が必要な課題は幅広い。ルールや仕組みを見直し、時代に即した形で機能させる必要がある。
 何のために存在する機関なのかを問い直す時期にも来ている。WTOが多国間で通商ルールの策定を目指したドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)が行き詰まった結果、今や貿易交渉の主流は2国間や地域の協定に移っている。
 WTO設立の背景をさかのぼれば、第2次世界大戦への反省がある。各国で保護主義が台頭して貿易紛争がエスカレートし、結果として戦争に発展してしまった。
 今また、米中対立の激化や新型コロナウイルスの感染拡大で、保護主義的な動きが広がっている。貿易紛争をルールに基づき、平和的に解決する枠組みは貴重である。
 WTOが自由貿易体制の維持に果たしてきた役割は大きい。日本もその改革に力を尽くさねばならない。

カテゴリー: 社説

ページトップへ