2021.02.13 08:00

【長男の官僚接待 】首相は逃げの姿勢通らぬ

 首相の身内が優遇され、官僚が忖度(そんたく)する。そんな構図となれば、安倍前政権の体質をそのまま継承したような不祥事である。
 放送行政などを所管する総務省の幹部4人が、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから個別に接待を受けていたと週刊文春が報じ、国会で野党の追及が続いている。
 東北新社の子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。国家公務員倫理法に基づく倫理規程は「利害関係者」からの接待を禁じており、幹部4人が違反している疑いは濃厚だ。
 総務省は12日の国会質疑で、幹部らが長男側と会食したのは現時点の調査で2016年から延べ12回に及ぶと明らかにした。昨年12月の会食ではいずれもタクシーチケットと贈答品を受け取っていたとしている。
 ただ、会食費用を負担していたかどうかや、贈答品などを含む金額は「精査中」として回答を避けた。幹部らもこれまでに年1回程度の会食があったとは認めているが、「調査を受けている」として詳細の回答は拒否する場面が目立っている。
 総務省と人事院が連携して調査しているようだが、前政権でも繰り返された「身内の調査」で実態がどこまで明らかになるのか、国民には不信感がある。内部調査を理由に、国権の最高機関での説明を軽視する姿勢は許されない。
 首相の答弁姿勢も疑問だ。「長男とは完全に別人格だ」と反論し、具体的な説明を回避している。「別人格」には違いないとしても、自らは無関係だといわんばかりの逃げの姿勢が通る問題とは思えない。
 複数の幹部は、首相が総務相時代に秘書官につけていた長男と知り合ったという。
 加えて、人事権誇示にこだわる首相自身の政治手法も影を落としているのではないか。8年近く官房長官だった首相は、官僚操縦術に関して「反対するなら異動してもらう」と公言している。
 官僚が首相の影をうかがい、保身と忖度に走った結果、接待が実現したとみられても仕方があるまい。
 首相が代表を務める自民党の選挙区支部が14~18年、東北新社の当時の社長から計250万円の献金を受けていたことも分かっている。
 首相は、国民の政治不信がこれ以上増幅することがないよう説明を果たす責任がある。
 身内優遇が事実ならば安倍前政権時に発覚した森友、加計学園や「桜を見る会」を巡る疑惑と根が同じだろう。首相と周辺に対する官僚の忖度がはびこり、行政の公正さ、公平性が疑われる問題である。
 前政権では安倍晋三前首相による答弁のはぐらかしや強弁もあり、疑惑が究明されないまま次々に累積。国会の審議日程を圧迫した。
 今国会は、新型コロナウイルスという危機への対応に直面している。菅首相は疑惑と正面から向き合って早急に解明し、国民に十分説明するよう求める。

カテゴリー: 社説

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