2021.02.12 08:00

【森会長の辞意】五輪が負った傷は深い

 遅きに失したとはいえ、トップの座を去るのは当然である。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の辞意が報じられた。スポーツ団体の理事起用を巡る女性蔑視発言の引責である。
 組織委や政府などは森氏の謝罪で幕引きしようとしたが、国内外からの厳しい批判がやまず辞任に追い込まれた。男女平等への感度の鈍さは覆いようもない。
 森氏が去っても一件落着とはならない。関係者は猛省し、再び理解と支持が得られるよう組織を刷新しなければならない。
 森氏は日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、JOCが女性理事を現在の約20%から40%まで増やす方針に関し、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言した。
 性別を含むあらゆる差別を認めない五輪憲章の原則に反する。発言のひどさは言うまでもない。同時に、評議員会で森氏の発言に誰も異を唱えなかったことも批判された。
 辞任を求める世論に対しても、「それほどの問題か」「余人をもって代え難い」。JOCや政府与党から聞こえてくるのは続投論が主だった。大会ボランティアらを辞退する動きには、「辞めたいなら新たに募集する」(自民党の二階俊博幹事長)。反差別への意識が高まる世論との隔たりは明らかである。
 新型コロナウイルスの感染収束は見通せず、ただでさえ五輪開催に懐疑的な見方が広まっている。開催への国民の意欲をさらにそぐような森氏の発言と、それを大目に見ようとした関係者らの責任は重い。
 世界経済フォーラムが2019年に発表した男女格差を示す指数で、日本は世界153カ国中の121位。日本では女性の社会進出が、他の先進国と比べて大きく遅れている。発言はそれを国際社会に知らしめることにもなった。
 女性蔑視を生み出す土壌はスポーツ界のみならず、日本社会のあちこちにある。社会全体で自省し、改善していかなければならない。
 本来なら厳しく対処すべき国際オリンピック委員会(IOC)さえ、当初は不問に付そうとした。その姿勢が国内外のアスリートをどれほど失望させ、傷つけたことだろう。
 五輪自体が負ったダメージも決して小さくない。それを解消するのは並大抵のことではあるまい。
 森氏の後任は、日本サッカー協会元会長の川淵三郎氏で調整されているようだ。五輪開幕まで約5カ月と迫っている。早急に体制を立て直すよう求める。
 女性蔑視発言はなぜ生まれたのか。誰もとがめることができなかったのはどうしてか。二度と同じことを繰り返さないためにはどうすればいいのか。しっかり総括することから始めるべきだ。
 その上で、開催に懐疑的な声にも真摯(しんし)に向き合う必要がある。コロナ下での五輪はどうあるべきか。感染防止とどう両立させるのか。丁寧に説明してもらいたい。

カテゴリー: 社説

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