2021.01.23 08:00

【案里議員判決】辞職し責任を明確にせよ

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた参院議員、河井案里被告に対して、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
 判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行だ。刑事責任は重い」と厳しく指摘した。案里議員は判決を重大に受け止め、辞職するべきだ。責任を明確にしなければならない。
 案里議員は、衆院議員で元法相の夫、克行被告と共謀し地元議員ら計100人に計2900万円余りを配ったとされる。公判で案里議員は配った現金の趣旨は「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と、買収目的を否定した。だが判決は退けた。
 市議1人への現金10万円は、案里議員の積極的な関与などが認められないとして無罪としたが、県議4人に30万~50万円渡した計160万円に関しては選挙買収と認めた。
 現金を渡したのは参院選公示日が迫る時期であり、選挙で期待された役割や立場などから案里議員への投票や票の取りまとめの報酬として相応だったとしている。
 一審であるとはいえ、票を金で買ったと認定された。案里議員は逃げることなく自らの行為を説明する必要がある。
 事件発覚は、選挙カーでアナウンスをする車上運動員に法定上限を超える日当を渡した問題が糸口となった。これが表面化して以来、河井夫妻はそろって国会出席の職務を果たさず議員を続け、「捜査中」を理由に説明することもなかった。議員の職をおとしめたに等しい。
 現職の国会議員夫妻が逮捕された前代未聞の事件は、特異な展開をたどったといえる。
 自民党本部が改選2議席の広島選挙区の独占を狙い、党広島県連が反対する中、現職の溝手顕正氏と新人の案里議員の2人を擁立した。党本部は案里議員側に溝手氏側の10倍に当たる1億5千万円を投じた上、当時の安倍晋三首相らが演説に駆け付け応援に力を注いだ。
 巨額の資金が買収に充てられたのか明確ではないとしても、政治不信を増幅させたのは確かだ。地元政界も混乱が続いた。それにしては、中央政界が深刻に捉えているようには受け取れない。
 官房長官当時に案里議員の応援演説をした菅義偉首相、巨額の資金を投入した自民党の二階俊博幹事長は判決を受け、共に「襟を正す」とコメントした。この言葉に国民がどれほど真剣味を感じただろう。
 案里議員は、連座制で当選無効を求める行政訴訟も起こされている。100日以内に判決を出すようにする「百日裁判」で審理し、春ごろ結論が出る見通しだという。また、今回の判決を不服として控訴すれば、刑事裁判と行政訴訟が同時に進み、いずれかが確定するまで議員資格を維持できるという。
 買収事件であるのに誰一人責任を取らないようでは、国民の不信がさらに膨らむのは間違いない。

カテゴリー: 社説

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