2021.01.17 08:00

【仁井田米偽装】信頼回復への道は険しい

 JA高知県は、ブランド米「仁井田米」の品種や産地を偽装して販売した問題で、外部調査委員会による報告書、再発防止策を公表した。
 併せて、県内の12JAと中央会、県園芸連など系統5団体を統合した一昨年1月からトップを務めた武政盛博組合長が今月末での引責辞任を表明した。関わった職員の処分も明らかにした。
 生産者、消費者を裏切った責任は極めて重い。猛省し、根本から態勢を立て直す必要がある。
 調査委の報告書から浮かび上がるのは、組織のずさんさである。現場任せがまかり通り、多くの法律に違反して、上司への報告や相談もされていなかった。現場の独自の考え方による運用が放置された結果、この問題につながったといえる。
 調査に対し「JAの利益よりも、生産者が作ったものを一生懸命に売るということが使命であると思っていた。『頑張って売ってくれ』という声にも応えたかった」と答えた職員がいる。生産者の栽培の苦労を思いながら仕事をしていたのだろう。ただし、法に背くことがあってはならない。
 報告書で目を引くのが、法令順守の意識が欠けている点だ。食品表示法、景品表示法、農産物検査法など違反、抵触した法律を幾つも挙げている。社会の規範であり、守らなければならない法律への理解、認識が甘いというしかない。
 報告・連絡・相談、作業のマニュアル、決裁、内部を取りまとめる統制といった組織のシステムが整っていない、とも報告書は指摘する。甘い認識がこの問題を起こした源と考えられる。
 産地の偽装について、ある職員は「2009年には行われていた。先輩から教わった」と説明している。だとすると、JA高知県に統合する前のJA四万十の時から続いてきたことになる。
 疑問なのは、武政氏が統合前のJA四万十組合長だった点と辞任表明との関連を記者から質問され、「想像に任せる」と答えたことだ。不祥事について問われているさなかである。説明責任が求められるトップの発言とはいえまい。
 県内の大半のJAなどを統合してJA高知県は発足した。組織の効率化、経営基盤の強化を生産者・組合員のメリットに結び付けようとしてきたはずだ。団結し、組織力を生かして農家の経済的、社会的地位の向上を図る―目指した方向は、この原点だろう。
 統合する過程で目が届かなかった点はないだろうか。改めるべき組織の悪弊は残っていないか。再発防止に取り組む中で「本当に生産者のためになるものは何か」を、真剣に考え直す必要がある。
 JA高知県は数多くの農産物などを取り扱う。幅広く事業も展開している。米の他にも消費者の厳しい目が向けられるかもしれない。生産者、消費者に誠実に向き合い努力を続けるしかない。当然だが、信頼回復への道は険しい。

カテゴリー: 社説

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