2021.01.01 08:45

カツオ養殖、未来開く 高知県内の産学タッグで挑戦中 食料問題の解決策に

養殖実験第1弾のカツオは全滅。そこから課題の解決策を探り、完全養殖への挑戦が続く(昨年11月、大月町古満目)
養殖実験第1弾のカツオは全滅。そこから課題の解決策を探り、完全養殖への挑戦が続く(昨年11月、大月町古満目)
 太平洋を泳ぐカツオを養殖できないか―。そんな前代未聞のプロジェクトが始まっている。高知の企業と大学がタッグを組み、親魚から卵を取ってふ化させ、脂の乗った「トロカツオ」に育てるという。日本周辺の天然カツオ資源の減少が深刻な中、“カツオ県”の新しい未来を切り開こうという取り組みだ。
 
 昨年11月、幡多郡大月町古満目(こまめ)の海辺にある「山崎技研」の新魚種開発施設。容量50トンの大型水槽の中で、3~4キロのカツオがゆったりとした速度で泳いでいた。紡錘(ぼうすい)形の魚体がぐるぐると回る様子はメリーゴーラウンドのようだ。
 
 同社と高知大学が、産学官連携の新事業を支援する県補助金を受けて、昨年スタートさせた3年がかりの共同研究。親カツオを飼育▽採卵▽ふ化▽稚魚育成―という「完全養殖」のサイクルを確立するため、産業化に向けた基礎データを蓄積する。カツオは、栄養管理によって高付加価値の「トロカツオ」に仕上げるという。
 
 取り組みは手探りだ。昨年10月、水産業者から譲り受けた成魚のカツオ30匹を水槽に入れた。しかし、弱って餌を食べない個体が出始め、1カ月ほどで全滅してしまった。
 
 「何かストレスが掛かっている。窮屈そうだ…」。同社は、激突防止のために水槽の壁に塗られた赤い格子模様がカツオの状態に影響しているのではないかと仮説を立てた。
 
 12月中旬、第2弾の40匹を再び仕入れた。今度は、模様がある水槽と模様のない水槽に分けて飼育。模様なしの水槽の魚が明らかに元気で餌の食いも良く、ほぼ死なずに残っているという。
 
 同社の山崎望専務は「カツオ飼育の難度は高い」としつつも、「狭い水槽でも胸びれをうまく使って泳いでいて、養殖例があるマグロなどと同様に飼えそうだ」と分析。「とにかく実験回数を重ねていきたい」としている。
 
 カツオの養殖という前例のないアイデアに、県内の水産業に携わる人はほぼ例外なく眉をひそめる。「カツオはいけすで飼えん。激突して死ぬる」など、否定的な考えが多数を占める。
 
 しかし、水槽を泳ぐ映像を見たプロジェクトの関係者は「できないというのは根拠がなかった」「衝突もなく、びっくりするぐらい落ち着いている」と喜ぶ。
 
  ◆     
 
 研究事業は、親魚からの採卵を目指すとともに、県外の施設からも卵の提供を受け、高知大学の施設でふ化させる。それらの実験過程で、細かなデータを収集していくという。
 
 ただ、仮に実験がうまくいったとしても、養殖カツオが歓迎されるのか。高値で売れる畜養マグロのように、ビジネスとして成立するのか―。
 
 プロジェクトを担当する高知大大学院の大嶋俊一郎教授は「今回の養殖は、単なる天然カツオの代替ではない」と答え、こう続ける。
 
 「天然資源の回復が難しく、今後は世界的な食料不足も懸念される。そうした問題の解決策として、高度な養殖技術を確立し高知発で世界に提案したい。それが狙いです。カツオはまさに、そのシンボルなのです」(八田大輔)

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