2020.12.13 08:00

【医療費「2割」】負担の在り方も議論を

 75歳以上の後期高齢者が、医療機関で支払う医療費の窓口負担について、1割から2割へ引き上げる議論が決着した。自民、公明の両党トップ会談で合意した。
 厚生労働省が、単身の年金収入を基準に5段階に分けて示した案のうち、ちょうど真ん中の200万円以上を対象とした。負担増となる人は370万人となる見込みだ。参院選後の2022年度後半の施行とする方向で調整する。
 安倍政権時から持ち越されてきた問題であり、人口の多い団塊の世代が全員75歳以上となる22~25年も迫っている。与党が結論を急いだのは確かだ。
 幅広い層に負担増を求める姿勢を打ち出したい政府・自民、公明は負担増の対象を少なくして高齢者への配慮を印象づけたい―。これが与党協議の構図だったといえる。
 「公明の言うことを聞かなくていい」。菅義偉首相がそう言ったと伝えられたが、歩み寄った。政府・自民が主張する収入170万円以上(対象者数約520万人)と、公明が主張する240万円以上(同約200万人)の間に落ち着く形となった。
 当初は懸け離れた主張をして、結局は妥協したとみられる背景には、来年夏の東京都議選、1年以内に近づいた衆院選がある。ただ、合意した結果を考えれば、中途半端の感は否めない。
 19年度の医療費43兆円余りの中で、75歳以上が約17兆円と4割近くを占める。そのうち、窓口で支払う自己負担分を除く費用に関しては、約5割を国や自治体の公費、約4割を現役世代の健康保険料からの拠出金、約1割を後期高齢者の保険料で賄っている。
 現役世代の負担による拠出金は、20年度では約6兆8千億円に上る。それに対して、今回の2割引き上げで現役世代の負担を軽くする効果は880億円にとどまる。
 団塊の世代が後期高齢者に入る22年度から医療費は急増し、同年度には拠出金が2500億円さらに膨らむ試算があったにもかかわらずである。
 安倍政権当時に「全世代型社会保障」改革の柱とされていたことからすれば、効果は限られているといわざるを得ない。
 医療費の負担をはじめとして、社会保障は、あらゆる世代が生涯関わっていく問題である。さまざまな角度から緻密に練り上げ、誰もが安心できる仕組みをつくらなければならない。
 負担に関しては、可能な限り、各世代が納得でき、世代間の公平性を保つ手だてを考える必要がある。医療制度の持続性を考えれば、避けて通れない課題だろう。もちろん医療費が重荷になり、治療が必要な人が受診を手控えるような事態を招いてはならない。
 少子高齢化が続く中、医療費の負担の在り方を巡っては、検証を重ねながら引き続き議論を続けていく必要がある。

カテゴリー: 社説

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