2020.12.11 08:00

【夫婦別姓】選択の自由を認める時だ

 「選択的夫婦別姓」を巡り、政府や自民党で議論が続いている。
 推進派は、政府の男女共同参画基本計画案に導入に前向きな表現を盛り込もうとした。しかし反対派の巻き返しで大幅に削除される方向だ。
 1996年に法制審議会が制度導入を答申して四半世紀近くがたつ。かつて「反対」が多数派だった世論は、今や「賛成」が上回っている。国民の理解が広がっている現状を踏まえ、法改正に向けた議論を加速させなければならない。
 内閣府の2017年の世論調査によれば、制度導入に伴う民法改正に賛成(42%)が反対(29%)を上回った。先月公表された60歳未満の成人男女を対象にした7千人規模の民間調査でも、制度に理解を示す人は7割に達した。とりわけ結婚が視野に入る20~30代の賛成率が男女とも高い。
 現行ではどちらかの姓に変えなければならないため、法律婚に踏み切れず事実婚を選ぶ人たちの大きな理由になっている。「少子化の一因になっている」との指摘もある。改姓の問題に直面する若い世代の意見は重視する必要があるだろう。
 自民党内の賛否は割れている。
 反対派は「夫婦別姓を認めたら家族の絆が壊れる」「孫とおじいちゃんで墓に違う名前が刻まれるのか」などと反発。「旧姓の通称使用の拡大で対応すべきだ」などと長年、主張してきた。
 とはいえ、夫婦同姓を法律で義務付けている国は日本以外にないとされる。別姓を認めている他国が日本と比べて、家族の絆に問題があるとは到底思えない。
 日本で改姓している96%は妻だ。国連の委員会からも再三にわたって、「差別的な規定」と撤廃を要請されていることを重く受け止めなければならない。
 確かに最高裁は15年、民法の夫婦同姓規定を「合憲」と判断してはいる。しかし裁判官15人のうち、女性3人全員を含む5人は「違憲」とした。判決は「制度の在り方は国会で論ぜられ、判断されるべきだ」とも促している。
 にもかかわらず、議論を進めてこなかった政府や国会の対応は怠慢と言われても仕方あるまい。
 この問題は、家制度への考え方や家族観によって意見が違うだろう。ただし、選択的夫婦別姓は夫婦同姓を選ぶ人の権利も保障している。国民それぞれの思いをかなえるための選択肢として、夫婦別姓の導入を進める時である。
 菅義偉首相は01年、自民党内の議員有志が選択的夫婦別姓の推進を党執行部に求めた際、現在、法相を務める上川陽子氏らとともに名を連ねた。「不便さや苦痛を感じている人がいる以上、解決を考えるのは政治の責任だ」と、導入に前向きな発言もしている。
 婚姻や家族の在り方は多様化している。菅首相には社会の変化と向き合い、時代に即した制度見直しを進める責任があろう。

カテゴリー: 社説

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