2020.11.28 08:00

【75歳以上医療費】納得できる結論を求める

 75歳以上の後期高齢者が、医療機関で支払う医療費窓口負担の1割から2割への引き上げを巡り、政府の全世代型社会保障検討会議が議論を続けている。来月、最終報告をまとめる予定で、24日の会議では議長の菅義偉首相が関係閣僚に内容の調整を加速するよう求めた。
 厚生労働省のまとめによると、2019年度の医療費は前年度比2・4%増の43・6兆円に上る。このうち75歳以上が17兆円、39・1%を占めた。医療費はほぼ毎年のように膨らみ続けている。財政を圧迫する要因の一つと指摘されるようになって久しい。
 だが、給付減や負担増といった国民の痛みに直結する問題が積極的に取り上げられることは多くない。
 高齢者による医療費の負担増も昨年7月の参院選の後に持ち越された。さらに安倍政権時の今年6月に結論を出す予定だったところ、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、先送りした経緯がある。
 医療費の負担増が避けて通れない課題であるのは間違いない。一つには、人口の多い団塊の世代が全員75歳以上となり、医療費が急増するとみられる2022~25年が目前に迫っていることがある。
 世代間の負担の在り方も厳しさを増す。1970年には現役世代9・8人で高齢者1人を支える形だった。少子高齢化の進展により2050年には現役1・4人が高齢者1人を支える形になるという。
 75歳以上の医療費の窓口負担割合は現在、現役並み所得がある人(単身で年収383万円以上)は3割、それ以外の人は原則1割で、これ以外の医療費は公費などで賄う。
 この1割の人の負担を2割とする今回の制度改革に当たり厚労省は、単身で年金収入が155万円以上の人から240万円以上の人まで、金額別に5段階に分けた案を示している。
 155万円以上とすると、対象者は最も多く約605万人。5段階の中で財政的な効果が最も大きい。逆に240万円以上とすると、対象者は約200万人と最も少なくなる。
 菅首相は会議で「能力に応じた負担をしてもらうことが必要だ」と述べた。確かにそれが前提だとしても、負担増に対する受け止め方は人それぞれだろう。制度改革の結果によっては、医療費が心配で受診をためらったり、受診回数を減らそうとしたりする恐れもある。
 厚労省の案については、比較的収入の低い人への配慮、または財政的な効果など、何を重視するかによって見方が違ってこよう。
 同会議の委員も、負担増の対象を限るよう求める人がいれば、対象を広げることを主張する人もいる。高齢者の窓口負担以外の医療費を拠出する団体関係者は後者で、現役世代の負担軽減を強調する。
 世代や立場などによって考え方は当然、異なる。慎重な議論が欠かせない。多くの人が納得できる結論を導き出し、最終報告について丁寧に説明することを求める。

カテゴリー: 社説

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