2020.11.26 08:00

【Go To見直し】運用のルールを明確に

 経済を優先してきた菅義偉首相がようやく、肝いり事業の運用見直しにかじを切った。
 政府は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から、新型コロナウイルスの感染拡大が著しい札幌市と大阪市を一時除外する。
 今月に入り、国内の1日の新規感染者が2千人を超える日が続いた。方針転換は当然だろう。
 トラベル事業は国内旅行代金の50%を国が支援。35%分は代金から割り引き、15%分は旅先で買い物や飲食に使えるクーポンを配る。
 7月22日のスタート以降、10月半ばまでの間に宿泊で利用した延べ人数は3100万人以上、割引支援額は約1400億円に上る。
 人とお金の流れが生まれ、観光業や飲食業といった地域経済が息を吹き返したことは間違いない。
 ただ、専門家はトラベル事業と感染拡大との関係について「エビデンス(証拠)がなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」と指摘している。
 経済再生へアクセルを踏み続けた一方で、感染抑止に向けたブレーキをかけるのが遅きに失した感は否めない。
 見直しは札幌、大阪2市を目的地とする旅行の新規予約を3週間停止。予約済み旅行は12月1日現地着分まで利用を認め、それ以降は割引無効。キャンセル料は不要とし、旅行業者らに代金の一部を補償する。
 ただ、2市を出発地とする旅行は割引を認めている。感染抑止を考えれば、ちぐはぐに感じる。
 全国知事会は感染拡大地域を出発地とする旅行の制限も検討するよう、政府に求めている。感染拡大地域からウイルスが持ち込まれるリスクを懸念するのは理解できる。
 また同じ都道府県内でも感染状況には差がある。全国知事会は対象除外について、より地域を限定する選択肢も求めている。
 政府はそうした意見を取り入れつつ、さらに制度の運用を改善するべきだろう。
 そもそもトラベル事業は見切り発車だった。スタート時に急きょ対象から東京が除外され、キャンセル料の補償を巡り政府の方針は二転三転し、旅行業界は対応に追われた。
 本来ならそれらを教訓にして、感染が再拡大した場合に利用者や事業者を混乱に陥れない対策を考えておくべきだった。
 西村康稔経済再生担当相は「キャンペーンを使って旅行するかどうかは国民の皆さんの判断だ」と述べて批判を浴びた。都道府県や国民に判断を丸投げするような姿勢では理解は得られまい。
 今後とも経済再生と感染防止の両立が求められる。それだけに具体的にどんな場合に、どんなふうに人の流れを制限するのか。
 多くの人が事業を利用するであろう年末年始が迫っている。これ以上、利用者や事業者が混乱しないよう、政府が責任を持って運用のルールを明示する必要がある。

カテゴリー: 社説

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