2020.11.04 08:00

【仁井田米偽装】深刻なJAの「裏切り」

 県内有数のコメ産地のブランド米を巡る不祥事に驚きを禁じ得ない。
 JA高知県が取り扱った2019年産の「仁井田米」のうち45トンが、品種や産地の表示を偽装して販売されていた。消費者の信頼を裏切る行為は許されない。全容を解明するとともに再発防止を求める。
 仁井田米は四万十町窪川地域のコメの総称。高南台地の昼夜の寒暖差などを生かして栽培され、香りや粘り、甘さなどに定評がある。各種の全国コンテストでも上位入賞の常連となっている。
 同JAによると、昨年から今年にかけて仁井田米に該当しない中土佐町大野見地域産のコメを「四万十町産」として販売。共同乾燥貯蔵施設の操作を誤り、2種類の品種が混入したコメを正しく表示せずに販売したケースもあった。
 通常栽培にもかかわらず、農薬と化学肥料を抑えた特別栽培米として販売していたことにも驚かされる。特別栽培米は通常栽培より30キロ当たり500円ほど高いという。「減農薬」などは消費者に人気のある付加価値だ。それを偽って利益を得るのは悪質と言わざるを得ない。
 偽装には同JA四万十営農経済センターの職員4人が関わっていた。「取引先との契約に対して収穫量が足りず、別の品種や産地で補おうとした」という。
 確かに19年産米の高知県の作況指数(平年=100)は、91で「不良」だった。農林水産省によるとこの年、台風や病害虫の影響を受けた九州や四国は指数の下落幅が大きかった。このため仁井田米も収穫量が足りなかったのかもしれない。だからといって偽装していいことにはならない。
 大野見地域産のコメの品質も評価されている。同JAの武政盛博組合長は「仁井田米、大野見米それぞれブランド化したい思いで取り組んできた」と話している。そうであるならなおのこと、産地を正しく表示して販売するべきだった。
 人口減少やパンなどへの食の多様化によって、コメの消費減が言われて久しい。今また新型コロナウイルスによる外食向けのコメの需要低迷が、それに追い打ちをかけている。
 こうしたことから2020年産米の9月の相対取引価格は6年ぶりに下落した。供給過剰感がさらに広がれば、一層の米価下落も懸念される。
 仁井田米などのブランド米は、逆境に立ち向かうための強力な「武器」となろう。そのブランド力や信頼性を、地域農業の中核であるJA自らが傷つけてしまったのは残念と言うほかない。
 高知県を代表する農産品では2018年、いの町のショウガ加工販売会社が中国産を高知県産として販売していた産地偽装が発覚したのも記憶に新しい。食の偽装で失った信頼を取り戻すのは並大抵ではない。
 同JAは外部識者を含めた調査委員会で、他に偽装がないかなどを調べるという。仁井田米全体が疑惑の目で見られないよう、調査を尽くし説明責任を果たしてもらいたい。

カテゴリー: 社説

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