2020.11.03 08:37

「幻のかんきつ」全国へ 直七生産(宿毛市)

集荷から搾汁、販売までを一手に引き受ける直七生産の従業員ら(宿毛市錦の搾汁工場)
集荷から搾汁、販売までを一手に引き受ける直七生産の従業員ら(宿毛市錦の搾汁工場)
 爽やかな香りが辺り一帯を漂い、青く輝く小ぶりの果実がごろごろとベルトコンベヤーに載せられていく。「幻のかんきつ」と呼ばれる「直七」が収穫期を迎えた10月、宿毛市錦にある「直七生産」(三松義高社長)の搾汁工場には、連日10トン近い果実が届いた。

 「出荷量は年々増えています」。72歳の三松社長が手応えを口にする。生産者は幡多郡や、吾川郡いの町などの約150戸だが、その9割を占める宿毛市では元々、自家消費のため自宅敷地に植えてある家庭が多かった。

 2009年に、市の特産品づくりと1次産業の振興を目的に生産組合が発足する。直七を育てるかんきつ農家は当初4戸しかなく、個々の民家の庭先になっている果実を集めるのに苦労した。

 組合を「直七生産」として株式会社化した15年から、市も生産拡大に向けて年間3500本の苗木を栽培希望者に無償提供。5年間の取り組みで農家が増え、「直七」の果樹は県内で約3万5千本に膨らんだ。09年に0・5トン前後だった年間収穫量も現在、300トン近くにまで増えている。

 同社では、10年に完成した工場で果実を一手に受け入れ搾汁。ポン酢などの加工品として販売するほか、冷凍保存して飲料メーカーなどに出荷している。

 直七の特徴はくせのないまろやかな酸味。三松社長は「どんな料理でも素材の良さを引き立てる」と評価する。近年は大手企業からの引き合いも多く、野菜ジュースや缶酎ハイなどに使われ、知名度も上がってきた。

 今年は初の試みとして、搾汁前の青玉も出荷。以前から「直七そのものを料理に添えたい」と青玉を求める声があったものの、鮮度保持や選果する人員の確保などに課題があった。新型コロナウイルスの影響で果汁の需要が停滞する中、「苦しい時こそ変化が必要」として、取引先と連携して踏み切った。

 「生産者からの受け入れだけは止めたくなかった」と三松社長。「1次産業の振興が本来の目的。生産者がもうかる仕組みを続けたい」。今後数年をめどに、果実の買い上げ単価の引き上げも検討している。

 これまでの果汁に加え青玉まで、姿を変えながら全国へと販路を広げ始めている幻のかんきつ。立派な特産品として、成長を続けている。(宿毛支局・新妻亮太)

《メモ》 直七はスダチの一種。広島県の因島が原産地といわれ、正式名称は「田熊スダチ」。かつて直七という名前の魚商人が「魚にかけるとうまい」と勧めて歩いたとされることから呼称がついた。かんきつ産地である宿毛市では、家庭の庭先に植えられる一般的な果実で、樹齢200年を超える古木も確認されている。全国的にまとまった生産量がなく、流通も少ないため「幻のかんきつ」とも呼ばれる。

カテゴリー: 政治・経済幡多

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