2020.10.26 08:00

【核禁止条約】日本の役割が問われる

 廃絶への道のりは長いとしても、核兵器を非人道的で違法な絶対悪と定める新たな国際規範が生まれる意義は大きい。唯一の戦争被爆国として、日本が果たすべき役割もあらためて問われよう。
 2017年に国連で、核を持たない122カ国・地域の賛成で採択されていた核兵器禁止条約の批准数が50カ国・地域に達した。来年1月に発効する見通しだ。
 条約は、核兵器を非合法化して開発、実験、保有、使用などを全面的に禁止する。使用の威嚇も禁じることで核抑止力を否定している。
 「核なき世界」を求める国際世論を背景に、核軍縮を保有国に迫る強い圧力となることが期待される。
 しかし、当初から実効性は危ぶまれてきた。
 批准国・地域は中南米やアジア、アフリカ、オセアニアの小国が大半。米中ロなど肝心の核保有国が加わらず、米国の「核の傘」に依存する日本など一部の非保有国も参加していないためだ。
 米国務省の当局者や菅義偉政権の閣僚、自民党幹部からは条約発効の確定を受けて「解決策にならない」「現実味が非常に薄い」といった否定的な声が出ている。
 ただ、世界の核廃絶への動きは進むどころか停滞が色濃くなっている。核兵器禁止条約はそもそも保有国の姿勢に業を煮やし、非保有国などが取り組んだものだ。
 ことし発効50年を迎えた核拡散防止条約(NPT)は米英仏ロ中の五大国に限定して核保有を認める一方で、「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を課している。
 ところが、核軍縮は一向に進まない。加えて条約未加盟のインドやパキスタン、イスラエルが核を保有する事態を招き、北朝鮮の核開発も続いている。
 米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は昨年失効。ロシアの条約違反を理由にトランプ米大統領が破棄方針を伝え、ロシアのプーチン大統領も履行義務を停止したからだ。
 来年2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉も、米国は中国も参加する枠組みにしたい考えだが、中国に応じる気配はなく膠着(こうちゃく)状態にある。
 核をもって核を制する発想から抜け出せない保有国主導の核軍縮は、前途多難なのが現実だろう。
 新型コロナウイルス流行の影響で来年に延期されたNPT再検討会議では、禁止条約が推進国と保有国との火種になるのは確実という。
 日本政府は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任している。しかし核の傘を提供する米国に配慮するあまり、役割を果たしてきたとは言い難い。禁止条約への不参加も被爆者らの怒りと失望を招いてきた。
 唯一の戦争被爆国の責任として、核廃絶に向けて禁止条約とどう向き合っていくのか。「橋渡し役」を真剣に担おうとするのであれば、今こそ具体的な戦略を示し、実行していくべきだ。

カテゴリー: 社説

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