2020.10.18 08:00

【学術会議問題】任命拒否の説明が先だ

 主権者である国民の多くが抱いた疑問に対し、丁寧に説明せず、論点のすり替えばかりが目立つ。異様さすら感じる政権の姿勢である。
 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題を巡り、首相が同会議の梶田隆章会長と会談した。
 梶田氏は、理由の説明と6人の速やかな任命を求める要望書を提出。しかし、この場でも首相は具体的な理由を説明しなかった。
 誰が、なぜ6人を除外したのかという問題の核心については、日ごとに不透明感が増している。
 首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から判断した」としてきた。そもそも抽象的で除外した基準や理由の説明になっていないが、その後「推薦段階の(105人の)名簿は見ていない」とも述べている。
 学者個別の名前も見ないまま、なぜ「総合的、俯瞰的」に判断できるのか。加藤勝信官房長官は内閣府から説明があり、首相が「考え方を共有し任命した」と軌道修正したが、釈然としない。
 日本学術会議法は「優れた研究または業績がある科学者から候補者を選考」と定める。会議側からは「選考基準と違う基準を適用し、任命拒否したとなれば法違反になる」との批判が出ている。
 任命拒否された6人は、安全保障関連法など安倍前政権の政策方針を批判した背景が指摘されてきた。
 この問題で首相に対しては、異論を許さない「強権体質」との批判も高まっている。そうではないというのであれば、丁寧に経緯の説明を尽くすべきだろう。
 政府と自民党が連携して、急きょ学術会議のあり方を議論し始めたことも異様さを増幅させる。
 年間約10億円の国費負担が妥当かどうか検証作業を本格化。政府側は予算や事務局職員の規模の妥当性、学術会議が期待されている役割を果たしているかを検証する。
 自民党が年内に取りまとめる提言を踏まえ、2021年度予算案への反映を目指すという。
 ただ、自民党内の主張は、学術会議側と認識が食い違う部分が少なくない。学術会議に問題があると印象づける戦略に乗り出したとも指摘される。
 例えば下村博文政調会長は、会議から答申が近年出ておらず「活動が見えない」と述べた。しかし、会議側は「政府が諮問しないから答申していない」と反論。会議のホームページによると、今年出された提言は60件を超えている。
 むろん税金が投入されている組織である以上、活動のあり方を点検するのは当然だろう。しかし、問題の核心である任命拒否理由を明かさないままの唐突な「行政改革」論議では、批判を封じるための論点そらしといわざるを得ない。
 憲法が保障する学問の自由や独立への政治介入だという疑問が解けていない。行革より先に、まずは首相が任命拒否の真相を語るべきだ。

カテゴリー: 社説

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