2020.10.15 08:39

「消毒液が苦痛」理解を コロナ対策で頭痛、吐き気…【なるほど!こうち取材班 パートナー紙から】

アルコールや塩素を含まない消毒液を手に掛ける60代の女性。「新型コロナウイルス禍の今は、どこでも消毒が求められる。『あの人はしていない』と後ろ指を指されないために」と、外出時は常に携帯しているという
アルコールや塩素を含まない消毒液を手に掛ける60代の女性。「新型コロナウイルス禍の今は、どこでも消毒が求められる。『あの人はしていない』と後ろ指を指されないために」と、外出時は常に携帯しているという
化学物質過敏症の患者が訴え
 新型コロナウイルスの感染予防で、建物の出入り口などに置かれた消毒液や、除菌作用のあるソープを手に掛けることが“当たり前”になっている。香りがある商品も少なくない。そんな中、新潟市の30代女性が、新潟日報社を訪ね、「化学物質過敏症により頭痛やめまい、吐き気など体調不良になる。ウイルス禍で体調を崩さないか心配」と訴えた。当事者はどのように苦しみ、社会にどんな対策を求めているのか―。「もっとあなたに特別報道班」(モア特)が取材した。

 化学物質過敏症は、建材や家庭用品、化粧品などに含まれる化学物質に過敏に反応して現れるさまざまな症状。厚生労働省は2009年にカルテに記載するための病名リストに化学物質過敏症を登録した。一方、発症のメカニズムには未解明の部分が多くある。

 この30代女性は「昨年、家の前の道路工事をきっかけに発症した」という。咳(せき)や湿疹、鼻血が出ることもあるという。

 新潟県内で耳鼻科、皮膚科、精神科など複数の医療機関を受診したが、はっきりとした診断結果を得られなかった。東京にある化学物質過敏症の専門医療機関には、全国から悩む人たちが受診するため、予約は約4カ月待ち。今年に入ってようやく受診でき、「過敏症と診断された」という。

 女性は「周囲からは、柔軟剤などの香りが『嫌い』『苦手』なだけと誤解されがち。変わり者だと思われてしまうこともある。家族や友人、職場の同僚、さらに医師にも理解されないことが最もつらい」と語る。

 ■   ■ 
 新型ウイルス禍で建物の出入りなどの際に消毒が求められることも不安を大きくする。消毒液に含まれる成分で体調を崩す恐れがあり、本音は使用を避けたい。ただ、多くの人は過敏症のことを知らないため、一から説明するのは大変で「手の消毒後にすぐ手を洗いに行っている」(女性)のが実情だ。

 新潟市の別の60代女性患者は「県内に化学物質過敏症の専門医療機関がないため、発症後、診療で神奈川県などの病院に7回通った」という。

 一般的な病気やけがの際にも不安が強いとし、「検査や麻酔、歯の治療も(薬剤や消毒に含まれる化学物質にリスクがあるため)できない。突発的な手術が必要な状況でも、県外でしか対応してもらえないのだろうか」と漏らす。

 ■   ■ 
 新潟県内の患者数ははっきりしない。県立看護大(上越市)の永吉雅人准教授=人間環境科学領域=が、上越市の62小中学校の全学年で1万1271人にアンケート調査をしたところ(2017年夏回収、有効回答7224人)、化学物質過敏症の兆候が見られる子どもは、ほぼ全学年で1割以上いた。上の学年になるにつれて増加する傾向で、中学3年では小学1年の2倍以上となる15%だった。

 新潟県消費生活センターによると、化学物質過敏症に関する相談は毎年数件寄せられており、その都度、国へ報告しているという。

 全国では、NPO法人化学物質過敏症支援センター(横浜市)が過敏症について、患者の相談に応じたり、症状の詳細について広報したりしている。安全な食品や日用品について患者に情報提供するとともに、各分野のメーカーには安全な商品の開発を求めている。

 新潟県の患者からは、県内でも行政や医療機関が、もっと啓発に力を入れるよう求める声が出ている。最初に情報を寄せた30代女性は「香料などに過敏に反応してしまう病気に関し、多くの人々にきちんと理解してもらえるように積極的に広報してほしい」と訴えた。(新潟日報)

 県民・読者の情報提供に基づいて取材する「なるほど!こうち取材班」(略称=なるこ取材班)は、同様の調査報道に取り組む全国の地方紙と、記事交換などをするパートナー協定を結んでいます。各紙の記事を随時掲載します。

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