2020.10.15 08:00

【非正規待遇訴訟】国の責任で格差是正を

 正社員に支給されているボーナス(賞与)や退職金を、非正規の労働者がもらえないのはおかしい―。
 正社員との待遇格差是正を巡る2件の訴訟の上告審判決で最高裁は、「各企業などの賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべき」とし、2件とも「(正社員などとの)不合理な格差」に当たらないとした。賞与や退職金の支払いを命じた二審判決を変更した。
 旧労働契約法20条は、有期契約で働く非正規社員と正社員との間の「不合理な格差」を禁じている。関東や関西で非正規で働いた原告の訴えは認められなかった。
 大阪医科大の元アルバイト職員に賞与を支給しないことの是非が問われた判決では、「賞与が正社員の支給基準の6割に満たない場合は不合理」とした二審判決を変更。賞与には、正職員の労務対価の後払いや功労報償の意味があり、非正規職員とは職務も違うとした。
 東京メトロ子会社の契約社員が退職金を求めた判決では、正社員とは業務内容が違い、正社員への登用制度もあったとした。そして、「(退職金を)正社員の4分の1すら支給しないのは不合理」とした二審判決を破棄した。
 総務省によると、今年8月時点の非正規労働者は約2千万人。全労働者の4割弱を占める。それだけに、今回の判決の影響を心配する人は多いだろう。
 使用者側の裁量を広く認めた2件の判決は、政府が進める「同一労働同一賃金」制度の運用に影響する可能性がある。
 ただし、判決では「賞与と退職金の差が不合理と認められる場合はあり得る」ともしている。非正規の労働者に賞与や退職金を一切支給する必要がないとしたわけではない。
 ということは、職員がどんな働き方をしているのか。働きに見合った報酬なのか。ケース・バイ・ケースで判断する必要がある。
 使用者と労働者側の話し合いが重要で、企業側は賞与や退職金の支払い基準といった賃金体系を明らかにしなければならない。
 非正規労働者は1990年代のバブル崩壊後から増え続けている。働き方の自由度が増したという見方もあったが、正職員との労働条件の格差はやはり大きい。
 政府が進める同一労働同一賃金制度は、今年4月からまず大企業に導入された。
 厚生労働省の指針は、会社への貢献が正社員と同じ場合は同額の賞与を支払うべきだとしている。だが、退職金の指針はなく、企業任せだ。こうした状況では労働者は安心して働けない。
 新型コロナウイルスによる経済悪化で非正規労働者は雇い止めなどが止まらず厳しい状況にある。安倍晋三前首相は、同一労働同一賃金を掲げる際に「非正規という言葉を一掃する」と強調した。さまざまな政策を継承した菅政権は、その目標も達成する必要がある。

カテゴリー: 社説

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