2016.02.20 10:18

高知大地域協働学部が高齢化“先進地”の大豊町で農作業に共感

高知県長岡郡大豊町怒田で、雨の中でかっぱを着てユズを収穫する高知大学地域協働学部の学生たち(2015年11月)
高知県長岡郡大豊町怒田で、雨の中でかっぱを着てユズを収穫する高知大学地域協働学部の学生たち(2015年11月)
 高知県内トップの高齢化率55.9%、平均年齢59.1歳―。県内でも“課題先進地”となっている長岡郡大豊町には、以前から高知大学の学生や教員が研究のフィールドとして活動してきた。卒業後に移住して農業を始めたOBもいる。高知大学の地域協働学部1期生の12人は、大豊町東部の集落、怒田(ぬた)と「ゆとりすとパークおおとよ」で「地域理解実習」に取り組んだ。山あいの限界集落で彼らが感じたのは過疎の厳しさと高齢者のたくましさだった。 

 山肌に沿って民家が立つ怒田は、人口約70人の小さな集落。ここに2007年ごろから高知大学の人文学部や農学部の学生たちが出入りして、研究や地域おこし活動などを行っている。その範囲は徐々に拡大し、現在は隣接する八畝や大平など東豊永地区全体に広がりつつある。

 怒田で学生たちの受け入れをまとめているのが、元高知大学職員で現在はUターンして農業を営む氏原学さん(67)。氏原さんは地域協働学部の学生に「まずは自分たちが育った環境と、こことの違いを学んでくれたら」と期待を込める。

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住民から指導を受けながら刈り取った稲をはさ掛けしていく(2015年10月)
住民から指導を受けながら刈り取った稲をはさ掛けしていく(2015年10月)
 1期生は2015年10月から怒田での実習をスタート。まずは稲刈り体験に挑戦した。地域で代々受け継がれてきた農村の営みも、学生にとっては初めてのことだらけ。住民が難なくこなしているコンバインでの収穫や稲のはさ掛けなどが想像以上の重労働で「農業はやってみないと(大変さが)分からない」ということを身をもって実感した。

 次に体験したのがユズの収穫。2015年はユズの豊作年で、2日間で計3トンほどを収穫した。畑には傾斜がある上、2日間とも雨に見舞われて足元は悪く、かっぱを着ての作業に学生たちは悪戦苦闘。

報告会を終えて地元住民と交流する(2016年1月)
報告会を終えて地元住民と交流する(2016年1月)
 ある学生は「この作業を高齢者がするのは大変。豊作といえど、人手も足りず単純に喜べない」と話し、集落の厳しい現状を感じたという。

 もう一つの実習地となった大豊町中村大王の「ゆとりすとパークおおとよ」では、指定管理者として運営に当たる「西日本高速道路エンジニアリング四国」の職員にインタビュー。集客の難しさや新たな発想の必要性を聞き取り、学生による企画提案につなげたいとの思いを強くした。

西日本高速道路エンジニアリング四国の自社農園でシイタケの栽培を手伝う (2015年10月、高知県長岡郡大豊町中村大王)
西日本高速道路エンジニアリング四国の自社農園でシイタケの栽培を手伝う (2015年10月、高知県長岡郡大豊町中村大王)
 また、「西日本高速道路エンジニアリング四国」がアグリ事業として進めるシイタケやブルーベリーの栽培も手伝った。

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 市川昌広教授はこれらの活動を通じて、「(住民との)共感度を上げる」ことの重要性を説く。「地域課題をどう協働して解決していくか。まずは農山村の生活や過疎の背景を知らないといけない。70代や80代の方が日頃やっていることを少しでも理解することが大事」と話す。

 吉田真由さん=香川県出身=は「自然豊かな場所だけど、人手不足で高齢者は大変。これをどう解決したらいいのだろうというのは実感した」と課題の重さをあらためて認識したという。

 その上で「学生がこれからも継続的に地域に入っていくことが大事。地域を理解するために、もっといろんな考えや価値観を持っている人と話をしたい」と意欲を示す。

 学生が集落に入ること自体が住民の気概にもつながっているようで、実習先のユズ畑を所有する小笠原豊実さん(90)は「ユズは重たくて作業が大変やけど、学生さんのおかげで本当に助かった。私らあも『もう年やから…』と言わず、もっと頑張らないかんという気持ちになる」と笑みをこぼす。

 一方で、氏原さんは「地域に入ってくる学生が増えてくる中で、継続性をどう担保していくか。うまく受け入れ手の多様性を確保するのも大事」と受け入れる集落側の課題も挙げる。

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 実習を終えて、1月上旬に怒田の集会所で開かれた報告会では、学生たちから大豊町で今後取り組みたい活動の提案もあった。棚田コンサートの開催、学生や就農希望者を対象にした農業体験の受け入れ、集落活動センターの活用…。イベントでの地域活性化から日常的な住民の集いの場づくりまで、内容は多岐にわたる。

 それを具体化していくのはこれから。氏原さんは「この報告会がスタートになる。私たちも学生に地域の中で何を体験させてどう成長させるかが問われている」と意気込む。

 学生と住民が刺激し合い、地域の未来を一緒に考えていく。その中で住民は集落を維持し続け、学生自身も成長していく。そんな関係性が生まれつつある大豊町で、両者がどのような展望を描いていくか。先進地での挑戦は続く。

棚田の風景に引かれて 岡上あさひさん

 私が大豊町を実習地に選んだ理由は、怒田集落から見える風景に引きつけられたからです。

 実習内容は農作業が多く、まさに「身をもって地域を知る」というものでした。稲やユズの収穫はかなり体力が必要で、実習メンバー12人中10人が女子という私たちにとっては骨の折れるものでしたが、その時支えてくれたのは私がほれ込んだ怒田の景色でした。

 澄んだ空気を吸って広がる棚田を見渡せば、身体の疲れがリセットされて「さあ、もうひと頑張り」と力が湧きました。その時から、私はこの気持ちを地域外の人にも味わってもらいたいと思うようになりました。

 怒田の風景を維持してきたのは、他でもなく怒田の住民の皆さんです。しかし、怒田は限界集落であり、後継者問題にも直面しています。住民の皆さんが守ってきた風景を残していくためには、怒田を維持していく人を絶やさないことが必要となります。現在は、このような課題について積極的に取り組む方も、話し合う機会をも惜しんで農作業をする方もいるという状態です。私はこれからも地域を理解していくとともに、地域の方をどのように巻き込んでいくのかも考えていきたいと思っています。

町内の関係つなぎたい 上山亜里佳さん

 大豊町での実習班は他の地域と異なり、東豊永地区怒田集落と「ゆとりすとパークおおとよ」というレジャー施設、これら2カ所で実習を行いました。

 怒田集落では主に、稲刈りやユズ収穫などの農作業、そして地域住民へのヒアリングを中心に活動しました。

 「ゆとりすとパークおおとよ」では、指定管理者である「西日本高速道路エンジニアリング四国」の行うアグリ事業のお手伝いや、高松にある「西日本高速道路エンジニアリング四国」の本社でのインタビューを行いました。

 この2か所での実習を通して、両者は大豊町内に存在するというのに、直接的な関係性が薄く、互いにつながりを持とうとする機会が少ないように思われました。

 大豊町のような中山間地域に存在する「ゆとりすとパークおおとよ」は、レジャー施設であるとともに大豊町の地域振興に貢献できる施設でもあるべきだと思います。

 その第一歩として今後、私たち地域協働学部生が怒田集落と「ゆとりすとパークおおとよ」とのつながりを築いていくお手伝いをすることで、大豊町にしかできない地域振興を試みたいです。

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カテゴリー: 教育大学特集教育


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