2020.10.10 08:00

【コロナ民間臨調】政府は自ら検証を急げ

 不確実性に包まれたウイルスが相手とはいえ、政府の対応は試行錯誤の連続で、失敗や課題も多いことを浮き彫りにしている。
 企業経営者や大学教授、弁護士らでつくる民間有志グループ、「新型コロナ対応・民間臨時調査会」が政府の新型コロナウイルス対策を検証し、報告書をまとめた。
 民間臨調は、日本で最初の感染者が確認された1月から半年間の政府対応を調査対象にした。安倍晋三前首相や閣僚、官僚ら83人に聞き取りを行っている。
 その上で、全国一斉の休校要請や緊急事態宣言の発出など一連の施策を「場当たり的な判断の積み重ねだった」と指摘した。
 報告書からは、政権内部や専門家会議(現在は廃止)との連携不足が混乱を招いたことがうかがえる。
 3月からの一斉休校は、専門家の「コロナに対する闘いが瀬戸際にきている」という発言で当時の安倍首相が急きょ決断。教育現場に与える影響の大きさにもかかわらず、事前に文部科学省や専門家会議への相談はなかった。
 専門家は「疫学的にはほとんど意味がなかった」と批判している。
 国内での3月中旬以降の感染拡大は、欧州で感染した人の流入が一因とされる。専門家会議は水際対策の強化を求めた。
 しかし政府は一斉休校に対する反発に消耗し、欧州旅行の中止措置は葬られた。首相官邸スタッフは「一番悔やまれる」と述べたという。
 巨額を投じて国民に配った布マスク「アベノマスク」も厚生労働省などと事前調整なく首相周辺が突っ走った。ここでも官邸スタッフは「あれは失敗」と証言している。
 疑問を感じるのは、ここまで政府自らの検証や総括がなく、そんな反省は国民に伝わっていないことだ。
 感染拡大防止に大きな役割を果たした専門家会議と、経済を重視する首相官邸は緊急事態宣言の解除基準などで「時に衝突した」とする。
 根拠を持った対策の選択肢と効果は専門家が示し、選んだ対策の責任は政治が負うのが本来の姿だ。
 今後の感染拡大期に向けては、より良い協働態勢の構築や役割分担の明確化が求められる。民間臨調が、対策の決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことを課題としたのは、これまでの各分野からの批判とも重なる。
 安倍前首相は欧米と比べて感染者数や死者数を抑え込んだとし、「日本モデル」と自賛した。
 しかし、民間臨調は国民の自主的な協力を前提とした危機管理体制は重大な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えると指摘。休業補償の法制化などを提言した。反省すべきは反省し、今後に備えるのは政府の国民に対する責任である。
 政府は相変わらず検証は事態収束後としているが、批判や責任の追及を避ける思惑がありはしないか。感染症対策の情報は現政権だけのものではない。菅政権は情報を隠さず、自ら対応の検証を急ぐべきだ。

カテゴリー: 社説

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