2020.10.08 08:37

はっぴぃ魚ッチ 見えなくても釣れるぜ! クライマーといかだチヌ

手探りでリールを操作する弘田寿栄さん
手探りでリールを操作する弘田寿栄さん
 秋空の下、浦ノ内湾に浮かぶ「いかだ」へと渡った。狙うはチヌ。極細の竿(さお)を使って、微妙な当たりを探るダンゴ釣りだ。

 ご一緒したのは高知市の中越祐太さん(32)、弘田寿栄さん(43)、前岡正人さん(49)、ミカさん(56)夫妻。

 4人はいずれも全盲や弱視の障害がある。なおかつ、垂直の壁に挑むスポーツクライマーだ。前岡夫妻は世界選手権にも出場している。

 今回の釣行は、4人が所属する総合型地域スポーツクラブ「高知チャレンジドクラブ」の企画。10年以上協力している須崎市浦ノ内塩間の「釣りいかだ谷村」は、渡船用の桟橋に車いすが通れる幅があり、いかだに洋式トイレを設置するなど配慮している。

 「いかだは安全。船にも乗るので普段できない体験ができるのがいいんです」とは、同クラブスタッフであり、釣り師でもある北村大河さん(45)。

足場が良く、のんびり楽しめる釣りいかだ
足場が良く、のんびり楽しめる釣りいかだ
 午前8時すぎ、仲良く実釣開始―。仕掛けはとてもシンプル。ただ、針に刺したオキアミなどを練り餌で包む作業には慣れが要る。ダンゴが海底に着いて、溶けて、割れるのを感じ取らなければ釣果は見込めない。

 「穂先の変化、見える? 見えんか。そんなら感覚や」と北村さんが弱視のメンバーに声を掛ける。全員、竿を両手で持ったり、太ももの上でそっと固定したり。日頃、病院などでマッサージしている“手感覚のプロ”たちは思い思いの姿勢で感覚を研ぎ澄ませる。仕掛けを回収する際は、リールを巻く回数などで針までの距離を把握する。

 「ん? 餌をくわえちゅうね」。当たりを感じ取っては竿をあおる。だが、この日は食いが渋かった。釣りの経験がある前岡夫妻がフグやヒョウダイなどを上げる中、この日初挑戦だった中越さんと10年ぶりの弘田さんは沈黙が続く。

 首をひねる弘田さん。そのTシャツには「NO SIGHT BUT ON SIGHT(見えなくても、登れるぜ)」のプリント。当たりがないのか、感じ取れないのか。海中を想像し、さらに没頭していく。

初めて自分で魚を釣った中越祐太さん(左)
初めて自分で魚を釣った中越祐太さん(左)
 「おっ」。中越さんが沈黙を破った。竿が弧を描き、かわいらしいヒョウダイが水面を割った。周囲から「やった!」の歓声。中越さんは表情を輝かせ、人生初の獲物を手のひらに受けた。

 参加した子どもたちもこつをつかみ、チヌ、キス、グレ、カワハギ…。終わってみれば、10種以上の魚が楽しませてくれた。

 NO SIGHT BUT FISH ON!

 見えなくても、釣れるぜ!(本紙・ハチ)

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