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2020.10.04 08:00

【学術会議人事】「任命拒否」を撤回せよ

 学問の自由への不当な政治介入と言われても仕方がない。
 日本学術会議が新会員に推薦した候補6人の任命を、菅義偉首相が拒否した。
 政府は理由を明らかにしていないが、6人は安全保障関連法や沖縄県の米軍普天間飛行場移設を巡る対応などを批判してきた。政府方針に異を唱える学者は排除するというのであれば看過できない。
 任命拒否は速やかに撤回されるべきである。
 学術会議は1949年に設立された。行政や産業などに科学の知見を反映させるため、政策提言を行っている。とりわけ重要なのが、日本学術会議法に定められている政府からの独立性である。科学者が太平洋戦争に協力したことなどへの反省から強く意識されていることだ。
 会員は学術会議が候補者を選び首相に推薦。これに基づき首相が任命する。任命を巡っては1983年、当時の総理府総務長官が国会で「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否はしない」と答弁している。政府も学術会議の独立性を尊重してきた証しであろう。
 この国会答弁との矛盾をなくすため安倍前政権時代に、内閣法制局との協議で学術会議の推薦を拒めるよう解釈を「明確化」したとされる。お得意の解釈変更で「秘密裏」に任命拒否の準備を進めていたのなら、問題の根は深い。
 菅首相は「(任命拒否は)前政権からの引き継ぎ事項だ。そんなに問題なのか」と漏らしたという。事実なら、ことの重大性への認識が著しく欠けている。
 民主主義は反対意見や少数意見を尊重することで成り立つ。異論にも耳を傾けてよりよい解決法を探り、少数意見から新しいものの見方や考え方を身につける。そのために憲法で言論や表現の自由、学問の自由が保障されている。
 政府が意に沿わない意見を拒んだり、政策に批判的な学者を排除したりする。それは民主主義の土台を壊す愚かな行為と言うほかない。
 学術会議の人事を巡る問題は、2016年にも起きている。複数の会員が定年を迎えるのを前に新たな会員候補者を選んだが、首相官邸が難色を示し欠員が生じたままになったという。
 安倍前政権のこうした恣意(しい)的で強権的な体質を、官房長官として長く支えた菅氏も継承しているのだろう。「政権の決めた政策に反対する官僚は異動してもらう」との発言がそれを裏付けていよう。
 今回の任命拒否は、政権が人事で掌握する対象を学者にまで広げるということなのか。「政府に異を唱えてはならない」という空気が広まっていくとしたら、日本社会に大きな禍根を残す。
 菅首相は「法に基づいて適切に対応した結果だ」と述べているが、理由になっていない。なぜ、どのような経緯で拒否に至ったのか。詳細に説明する責任がある。

カテゴリー: 社説

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