2020.10.02 08:00

【概算要求】「緊要な経費」見極めを

 国の財政が厳しさを増す中、新型コロナウイルス対策に便乗した不要不急の予算が紛れ込んでいないか。政府には例年にもまして透明性の確保と厳しい精査を求めたい。
 菅義偉政権が初めて手掛ける2021年度の予算編成で、財務省が各省庁からの概算要求を締め切った。一般会計の要求総額は7年連続で100兆円を超える見通しとなった。
 ただ、感染症対策などでは金額を示していない省庁も多いため、実際の要求額はさらに膨らみ、年末に決まる当初予算の総額は過去最大を更新する可能性がある。
 要求額が最も多いのは厚生労働省で、2020年度当初とほぼ同額の約33兆円になった。
 だが、高齢化に連動した社会保障費の自然増は示していない。ワクチン接種体制の構築や雇用調整助成金といった経費は金額を明示しない「事項要求」とした。このため、感染症対策費などは数兆円規模で積み上がる見通しだ。
 財務省が今回、各省庁に示した異例の要求方針も不透明感を増す要因になっている。
 各省庁の既存経費の要求を2020年度当初予算と同額を原則とし、コロナ対策などの「緊要な経費」は上限のない別枠で計上を認めた。
 これを受け、国土交通省は国土強靱(きょうじん)化予算を事項要求の形で緊要な経費に盛り込んだ。自民党内では「地方の防災を進めることでテレワークの推進にもつながる」と関連付けようとする動きもあるという。
 このほか各省の「緊要」には、以前から取り組んでいた海外へのインフラ輸出など「ポストコロナ」を理由にした事業も散見される。
 むろん感染症が猛威を振るい、豪雨災害も相次ぐ中で、万全の予算措置を講じるのは当然だ。
 しかし、コロナ禍に伴う経済対策で2020年度の新規国債発行額は90兆円を超えた。国の長期債務残高は2020年度末に993兆円に膨らむ見通しになる。金利環境が変化して金利が上昇すれば、想定外に財政が悪化するリスクは拭えない。
 将来世代のためにも、財政規律を維持する姿勢は欠かせない。年末に向けた予算編成過程では、優先順位をつけて必要な事業を絞り込む努力が一層求められる。
 一方、2021年度の地方財政は厳しい状況が見込まれている。
 景気減速で地方税収が大幅減となる見通しに加え、国の財政悪化で地方交付税も必要額を確保できるか不透明だからだ。不足分の穴埋めは、自治体が発行する赤字地方債「臨時財政対策債」の大幅な積み増しが不可避との見方が強まっている。
 菅政権も地方創生、地方の活性化を掲げている。コロナ対策でも最前線に立つ地方には十分な対応を求めたい。
 麻生太郎財務相は「経済再生と財政再建の両立を目指している。質の高い予算をつくっていきたい」と述べている。どうめりはりをつけるか。菅政権の力量が試される。

カテゴリー: 社説

ページトップへ