2020.09.27 08:00

【安保法5年】なし崩しの運用許されず

 集団的自衛権の行使などを可能にした安全保障関連法の成立から5年がたった。
 多くの専門家が「違憲」としてきた法は2015年、安倍前政権と与党が数の力で強引に成立させた。国会での論議も国民の理解も深まらないままだった。
 政府は成立後も国民への説明に努めると主張してきたが、多くの国民がいまなお納得できていない点はまず指摘しておきたい。
 その安保法を今月発足した菅政権も「安定的に運用していきたい」としている。だが、違憲性だけでなく実際の運用でも多くの疑問が生じている。政府の徹底した説明や国会論議が求められる。
 安保法では、米国など密接な関係にある他国が攻撃を受け、日本も存立が脅かされる場合は「存立危機事態」と認定。他に適当な手段がないなどの「武力行使の新3要件」を満たせば、集団的自衛権が行使できるようになった。
 他国の戦争に巻き込まれる恐れがあるということだ。この5年間は集団的自衛権が行使される例はなかったが、不安は大きい。
 通商や南シナ海問題を巡って米国と中国の覇権争いが激しくなっている。軍事衝突の事態にでもなれば、日本が巻き込まれる恐れは否定できない。
 そうでなくとも日米は軍事一体化が加速している。安保法によって、平時から自衛隊が米軍艦艇や航空機を守る「武器等防護」が可能になったからだ。
 2017年に2件だった武器等防護は18年に16件、19年に14件と増えている。ところが、防衛省は具体的な内容や実施時期などの詳細を「米軍の運用に直結する内容だ」として明らかにしていない。
 これでは国会や国民が検証すらできない。政府は「可能な限り最大限の情報を公開する」としてきたはずである。
 武器等防護が常態化すれば、自衛隊と米軍は一つと映るだろう。他国による日本侵攻への抑止力になるとの見方もあるが、逆に危険が高まる恐れも否定できない。
 安保法の成立後、政府はヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の事実上の空母化に乗りだした。長距離巡航ミサイルの導入も目指す。これらは「専守防衛」を超え、先制攻撃の装備にもなりかねない。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画が中止になると、自民党内ではまたぞろ、相手領域内で弾道ミサイルを阻止する「敵基地攻撃能力」を求める声が強まっている。防衛予算の拡大も続いている。
 こうした流れを見ても、安保法のなし崩し的な運用は危険だ。しっかりとした情報公開や監視、検証の仕組みが整わなければ、平和憲法も形骸化しかねない。
 5年の節目と新政権発足を、安保法について改めて議論する機会にしたい。

カテゴリー: 社説

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