2020.09.26 08:00

【ジャパンライフ】政官との関係含め解明を

 長年にわたる巨額の消費者被害はなぜ拡大したのか。政官界との関わりはどう影響したのか。事件を巡る闇の全容解明を求める。
 磁気健康器具の預託商法を展開し、多額の負債を抱えて破綻した「ジャパンライフ」が債務超過の事実を隠して顧客から資金をだまし取ったとして、元会長の山口隆祥(たかよし)容疑者らが詐欺の疑いで逮捕され、捜査が進んでいる。
 同社は2003年から訪問販売で磁気ネックレスなどの購入を勧誘。それを第三者に貸し出して配当を得られるとする「レンタルオーナー制度」を展開していた。
 実際には商品はほとんど存在せず、新規契約の代金を配当に回す自転車操業状態だったとみられる。
 捜査当局は、44都道府県の延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めていたとみている。
 高齢者の蓄えや東日本大震災の被災者の賠償金まで狙ったやり口は極めて悪質だ。高知県でも多額の被害が出ている。事件の全容解明とともに被害の回復も急がれる。
 消費者庁は、同社のような「販売預託商法」について、来年にも法改正して原則禁止する方針を示している。これ以上、同様の被害が起こらない仕組みの整備が必要になる。
 疑問が膨らむのは、消費者を守るべき行政のここまでの鈍い動きだ。
 国民生活センターには、同社に絡む相談が早くから寄せられている。ところが、同社の危うさを警戒していたはずの消費者庁が初めて一部業務停止命令を出したのは2016年末だった。
 同庁では14年の段階で同社の対応を検討する会議を開催。「本件の特異性」という資料が示され、「政治的背景による余波懸念」などと記載されていたという。これはどういう意味なのか。
 山口容疑者は同社設立以来、国会議員への政治献金を繰り返していた。内閣府などの元官僚や元新聞社幹部も会社に迎え、多額の顧問料を支払っていた。こうした政官界などとの関係が被害拡大に作用したとすれば、看過できることではない。
 2015年当時の安倍晋三首相が主催した桜を見る会に、山口容疑者が招待されていた問題も再燃している。招待状はチラシに印刷して勧誘セミナーで利用された。「初めて来た人でも会社を信用した」とする元社員の証言もある。
 官房長官として前政権を支えた菅義偉首相は、廃棄したとされる招待者名簿の再調査を拒否し続けてきた。首相就任後は、桜を見る会を来年以降中止したいと表明。疑惑を幕引きにしたい思惑がにじむ。
 しかし、巨額詐欺事件が絡んできた以上、あらためて問題を検証し、国民に説明を果たす責任はさらに重みを増している。
 菅首相は就任直後に「客観的におかしいことは直していかないといけない」と述べた。前政権の「負の遺産」まで継承するのかどうか。新政権の体質が問われる。

カテゴリー: 社説

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